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IT技術者教育に携わって25年が経ちました。その間、変わったことも、変わらなかったこともあります。ここでは、IT業界の現状や昔話やこれから起きそうなこと、エンジニアの仕事や生活について、なるべく「私」の視点で紹介していきます。

2014年オールドメディアの巻き返し?

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●テレビよりツイキャス

「最近のテレビはつまらなくなった」と思っている人が多い。私もそうだ。

自宅のテレビはアナログブラウン管式だが、ケーブルテレビ経由の配信で見ている。総務省の指導によるデジアナ変換配信で、2015年3月まで継続されるそうだ。逆に言うと、それまでにテレビを買い換えなければならない(もしテレビを見たければ)。

しかし、今のテレビ番組では新しいテレビを買う気がしない。そして「むしろYouTubeとUstreamの映るテレビが欲しい」とつぶやいたら、最近のテレビの多くはインターネット接続ができて、YouTubeもUstreamもツイキャスも映るんだそうだ。なぜ、それをCMで流さないのか。テレビCMは無理だとしても、インターネット広告なら問題ないだろうに(YouTubeを見るためにブラウン管つまりtubeのテレビを買い換えるというのも変な話だが)。

ちなみにツイキャスというのは、無料で使える動画配信サービスだ。似たサービスであるUstreamとの大きな違いは以下の2点である。

  • スマートフォンに最適化されているため、画質は低いが軽快に動作する
  • 視聴者との双方向コミュニケーションが半ば強制される

ツイキャスの配信は30分に限定されるが、視聴者から送られる「コンティニューコイン」と呼ばれるポイントをためれば最大4時間まで延長できる。つまり、30分を超えて連続放送したければ視聴者のサポートが不可欠である。その他、視聴者は「拍手」や「花束」、「お茶」なども送れ、自分の存在をアピールできる。

視聴者は、利用時間に応じて自動的に一定のポイントが与えられるので、ライトな使い方をする場合は無料で使える。無料枠を超えてポイントを使いたければ購入もできる。もちろん、Ustreamと同様、コメントを付けることもできるし、そのコメントをTwitterと連動することもできる。スマートフォンやタブレットであらかじめ登録しておけば、その人がツイキャスを開始したことを通知するサービスもあり、見逃すことがない。

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▲路上ライブでツイキャス中継をするシンガーソングライター「詩愛(しおん)」さん。

ツイキャスの成功を見ると、画質よりもコミュニケーションが重要であることがよく分かる。テレビ業界はハイビジョンを強制導入し、現在は4Kビデオに力を入れているようだが、これでテレビ人口が戻ってくるとは全く思えない。

1990年頃、こういう言葉を聞いた。確か、コンピュータ科学者のアラン・ケイが言ったのだと思う。

かつて、娯楽の中心は映画だった。それがテレビにとって代わり、現在はファミコンになった。
楽しさはどんどん向上しているが、画面解像度はどんどん下がっている。画質は娯楽の重要な要因ではない。

ちょうど任天堂ファミコン全盛期の話である。

●テレビの試みとラジオの試み

「メディアトリガー」というサービスが始まった(フジテレビ、テレビ番組と連動するセカンドスクリーンアプリ「メディアトリガー」を発表)。テレビ番組と連動し、何らかの「トリガー」によって、スマートフォンやタブレット向けの特別な情報を送付するものだ。

面白そうなので、試しに使ってみた。番組はBSフジの「ワッチミー!TV×TV」である。番組がプロデュースするタレント(ワッチミーナ2014)のオーディションをやっていて、候補者紹介時にトリガーがかかり、特別な動画が配信された。ただし、テレビを見ながら別の動画を見るのはほぼ不可能だ。当たり前である。目は2つ、耳も2つあるが、脳は別々のコンテンツを同時に処理できない。テレビは、視覚と聴覚を同時に使うので、別メディアと補完関係を築くのが難しい。

その点ラジオは視覚を使わないので、他のメディアと連携しやすい。たとえば、私は毎週日曜日の午後5時からは「あ、安部礼司」という番組を聞いている。この番組を聞いている人の何人かはハッシュタグ#abe02でツイートするが、これが非常に面白い。昔やっていた「アバンティ」という番組を何年ぶりかで聞いたときは、登場人物同士が結婚していて驚いたがTwitterで経緯を教えてもらった(番組は終了したが、Webサイトはまだ残っている)。ラジオとTwitterは、スポーツ試合のパブリックビューイング的な面白さがある。自然発生したものだろうが、ラジオ局も楽しさを積極的にアピールしているようだ。

近年のITは、完全なシステムを提供するよりも、不完全なシステムでもオープンなシステムが好まれる。不完全だと、利用者が新しいアイデアを出してくれるし、他のシステムと連携可能な仕組みがあれば誰かが実装してくれる。その結果、かえって利用者が広がる。Twitterは、「140文字以内」という限られたコミュニケーションメディアだが、画像掲載WebサイトやURL短縮サービスと連携することで多くの可能性が生まれた。また、TwitterにアクセスするAPIが公開されているため、公式Webサイトよりも高機能なクライアントが多数生まれた。

完全なシステムだったら、こうした広がりは生まれず、ユーザー数も限定的だっただろう。Facebookは、写真や動画掲載機能を持ち、完全なシステムを構成しているように見えるが、Twitterとの連携機能など、広がりを持たせる仕組みは残している。YouTubeも、動画をオブジェクトとして埋め込むことで、ブログなどの素材として使いやすくなっている。

テレビは、双方向性もなく、他のメディアとの連携もできず、再利用もできない。地デジになって双方向性が実現できたことになっているが、積極的に使われてはいない。視聴者数が圧倒的に違うという言い訳をするかも知れないが、ニコニコ動画は数万人に対して擬似的な双方向性を実現している。テレビ局主導で他のメディアとリアルタイムに連携するのが難しいのであれば、再利用を許可すれば多くのメディアに広まるだろうが、それも世界でも稀なほど厳しいコピー規制によって不可能になっている(そんなに見せたくないなら放送しなければいいのに)。

「メディアトリガー」の試みは、テレビからスマートフォンに対象を広げるチャレンジなのだろう。今の所成功しているようには見えないが、双方性の仕組みや、オープンな再利用(引用)システムを導入することで、今後成功する可能性は十分にある。

ちなみに、私が見た「ワッチミー!TV×TV」は、ワッチミーナ2014の候補者35人中20位だった町宮亜子さんが、13位に急上昇して決勝進出を決める部分がクライマックスである。このポイント上昇を支えたのが、年末に毎日やっていたツイキャス放送のようだ。大手メディアの助けを借りず、自力で行なったプロモーションで大手メディアに影響を及ぼせる時代になった。

●2014年大予想

テレビの存在は相変わらず大きいが、テレビにはない魅力を持った個人メディアの存在感は徐々に大きくなっている。2014年は、こうした個人メディアを無視できなくなり、さまざまな動きがあるだろう。メディアトリガーはその1つだが、他に放送番組を一定期間無償公開する動きもある。今年末くらいにはテレビを捨てるか買い換えるか、決めたいと思う。

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