世の中に商品を送り出すときに、市場で求められているものがなにかを考える場合と、自社なら何ができるかを考える場合とがあります。

例えば後者は自社で運営するシステムにリソースの余剰があるので貸し出してしまおうとか、超大規模で可用性の高いサービスを運営するノウハウがあるので貸し出してしまおうという発想であり、いわゆるプロダクトアウトな発想です。

一方で、自社でハードウェアを購入すると資産を抱えなくてはならないとか、保守がつきまとうとか、やめたいときにやめられないとか、セットアップに要する時間や調達リードタイムが無駄だという声があり、それに耳を傾けるのはマーケットインな発想です。

本日、IIJさんのクラウドサービス「IIJ GIO」のサービス説明を聞く機会があったのですが、今のクラウドサービスにプロダクトアウトな発想が多い中、マーケットインの思想で作られたサービスであるように感じられました。歴史をたどれば2000年頃にIBPSというサービスを開始してノウハウを蓄積し、今のIIJ GIOにつながっているとのことです。

当時、同じような構成のサーバを構成して納品する作業が多く、合理化して行えないかということが課題であったそうです。そのため標準的な構成であればIIJ側に準備しておき、お願いすれば微調整の上で比較的短いリードタイムで貸し出してもらえるような工夫をしたとのこと。10年前に今のクラウドサービスとほとんど同じスキームが確立していたのですね。

今回のIIJ GIOのサービス説明では主に2つのサービス内容について説明を聞かせていただきました。

1つはコンポーネントサービスです。
http://www.iij.ad.jp/GIO/service/component/
仮想サーバにネットワークやストレージといったリソースを組み合わせることで自由度の高い環境を構築することができます。

もう1つはホスティングパッケージです。
http://www.iij.ad.jp/GIO/service/platform/hosting/plan.html
コンポーネントが組合わされたプランが提供されます。

両者は料金や条件、好みに合わせて好きな方を選べばよいのですが、特に気になったサービス内容としてはコンポーネントサービスのネットワークアドオンに「閉域網」への接続が挙げられていることです。
http://www.iij.ad.jp/GIO/service/component/network/
閉域網ゲートウェイからプライベート接続という線が伸びていて、

閉域網より接続が可能なゲートウェイを用意しています。
・10M,100Mの2タイプの帯域を選択いただけます。また、GIOセンター側での接続機器は弊社で用意しておりますが、オプションにてお客様による持込も可能です。
・IIJ GIO接続点からIIJ GIO区間はすべて冗長化した構成でご提供します。
・閉域網接続とVPN接続を組み合わせてのご提供も可能となっております。

というところの使い勝手がよさそうです。ひょっとすると、既存の謎のロジックが詰まったAPサーバはそのままに、DBとWebだけをクラウド化するといったことも可能かもしれません。

話は変わり、今回のブロガーミーティングで強烈に盛り上がったのはインフラ周りの話でした。電源周りはどうなっているか、コンテナはどのようなものなのか、立地はどこなのか、ラッキングはどこでだれが行うのか、冷却はどうしているのか、消防法はクリアしているのか、建築基準法はどうしているのか、消防設備はどのようなものを使う予定なのか、そういったことを聞くことができました。

中でも面白かったのは加湿面での話です。外気冷却の問題点として、湿度をコントロールしなくてはならないという点があります。湿度が下がり過ぎると静電気等の弊害が起きることから、加湿を行わなくてはなりません。加熱式の加湿は電力を多く必要とするため、気化式の加湿装置を使っているとのことでした。平たく言うと湿ったスポンジに風を当てることで湿度を得るような仕組みのため、コントロールが難しいそうです。

最後に。我々で一部始終をtwitterで(#IIJEVENT)中継していたのですが、それを見た方から価格競争面について疑問に思う声があがりました。そんなに安くなってしまってどうなるのだろう?というようなものです。

私はさほど心配していません。例えばこの製品。

https://jp.rs-online.com/web/search/searchBrowseAction.html?method=getProduct&R=6407558

携帯電話等に使われる積層セラミックコンデンサなのですが、高さが0.3mm、長さが0.6mmです。普通のシャープペンの芯がポキッと折れたときの破片くらい小さいわけですので高度な製造技術を投じた高価な製品であるように思いますが、大量購入した場合の単価は1個2円です。ということは原価はそれよりもさらに安いことになります。

私は学生時代を京都で過ごしました。京都には村田製作所というコンデンサの有名メーカがあり、社員の方にまさしくこの話を伺う機会がありました。ガラス瓶の中に砂のようなものが入っており、よく見るとこのコンデンサです。本当に砂としか見えません。

携帯電話には200個とか300個とかいうコンデンサが使われており、その中に1個でも不具合があれば携帯電話全体が動かないわけですので、2円の部品と言えど不良品は許されません。その中で利益をあげていくというのがいかに大変なことか。高い技術研究能力だけでなくお客様の業界の需要動向を拾ってくる営業活動や、生産部門の改善活動など全社一丸となって製造に打ち込んでいるからこそ、このように2円の部品からも利益があげられるのだというお話でした。

クラウドコンピューティングサービスも、実はそういったきめ細かな面が必要なのではないかと思います。お客様の需要把握、インフラ面の改善能力、運用管理ソフトウェアのライセンスコスト削減、運用人員の削減、ハードウェアメーカーとのリレーション強化、そういった総合力で勝負する時代がやってくるように思います。そのような場面では、日本企業は非常に大きな強みを持っているのではないでしょうか。IIJ GIOが大鑑巨砲主義のクラウドサービスを打ち破ってくれることを期待します。

yohei

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コメント
Eno 2010/07/30 00:41

興味深く拝読させていただきました〜。
国産クラウドサービスは、米国勢に勝てるのだろうか?
IIJさんには頑張ってもらいたいものです。

YS 2010/07/31 00:19

なぜ村田製作所が高い利益を上げられているかが良くわかりました。
私も小学生の頃に電子回路を作ったことがあるぐらいなので、あまり大した知識はないのですが、今は200~300円程度出せば、超高性能のマイコンが変える時代で、それの100分の1でコンデンサを売っているとは村田製作所は殿様商売と言って良いかもしれません。
ただ、コンデンサは電気製品の寿命を決める部品の様で、パソコンでも最初に故障するのは、大抵電源ユニットの大容量の整流用コンデンサーのようです。

yohei 2010/07/31 02:31

Enoさん、コメントありがとうございます。
日本の自動車市場が世界制覇することを予想できた人が少なかったように、クラウドの勝者もどうなるかわからない部分が大きいですね。壊れて困る度合いでは自動車より更に大きいような気もします。私も、IIJさんに限らず日本のプレーヤーみんなに頑張ってもらいたいと思っています。
YSさん、コメントありがとうございます。
村田製作所は品質という点で価格の下落を抑えつつ、それでも落ちてしまった価格内で利益を出していくというところにすごさを感じます。
よくマザーボードではコンデンサがダメになって全体が死亡、ということがありますね。一度だけキットを買ってきてアンプを自作したのですが、コンデンサを交換すると音が変わるのがおもしろかったです。ちなみに今はプラグインハイブリッドの充電装置回りでコンデンサ屋さんが大活躍のようですね。


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山口 陽平

山口 陽平

国内SIerに勤務。現在の担当業務は資金決済法対応を中心とした資金移動業者や前払式支払手段発行者向けの態勢整備コンサルティング。松坂世代。

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