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湾岸戦争で活躍したtwitterのご先祖様

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経営者はメールの前置きのあいさつにうんざりしているのかもしれない。

2人のリーダーが日本とアメリカでそれぞれ似たようなアイデアに行き着いた。ひとりはソフトバンクを率いる孫正義社長、ひとりは湾岸戦争の後方支援部隊を率いたウィリアム・ガス・パゴニス中将だ。彼らが目指したのはコミュニケーションの無駄を省くことだ。

孫正義氏をよく知る人物によれば、孫正義氏はメールの冒頭を3行しか読まないそうだ。そのためメールの4行目に書いた用件が伝わらなかったことがあるという。その孫正義氏が先日ソフトバンク社員2万名にマイクロブログサービスのtwitterを活用するよう勧めた。twitterでは一度のtweetに140字しか詰め込むことができない。「平素は格別のご高配を賜り」という見飽きた挨拶をやめ、必要な事柄だけを伝え合うことにぴったりのサービスであると言えるだろう。

1990年、twitterの生まれる16年前のイラクでtwitterと同様のマイクロメッセージが活躍していた。湾岸戦争で後方支援を担当したパゴニス中将は、膨大な物資や兵員の輸送を担当する中でその仕組みを完成させた。使用されたのは3インチ×5インチの紙製のカードだ。このカードに書かれたメッセージは、伝書士によって米軍のいたるところに運ばれた。1日に1000枚以上のカードがやり取りされ、自分の手元に来たカードをその問題を処理する能力のある人物に転送したり、許可や指示を書き入れて返信することが活発に行われた。名刺2枚分の面積しか持たないこの小さなカードが情報の流れをスムーズにしたおかげで、湾岸戦争では1万2千台の戦闘装軌車両、11万7千台の装輪車両、18万3千人の人員、107万トンの物資と器材がアラブの地に輸送され、運用された。

しかし日本人には短いメッセージを書くことへの心理的な抵抗があるかもしれない。大里真理子氏はブログでこのように書いている。

「報告は結論からせよ」とスタッフに言う私も、文章になると、英語は結論から、日本語は起承転結の順番が一番すんなり来ると思っている節がある。

しかしそうとばかり言っていられない事情もある。

「今やeメールを端から端まで丁寧に読むことは不可能になってきたよねぇ」とある人が言ったら、アメリカ人の知人が、「だから僕は最初の5行しか表示できないようにメーラーを設定しているよ」

日本人もそうなる日が近いかも。

結論を先に書く英語文化においても、昨今の電子メール主導のビジネスの現場や湾岸戦争時のような状況においては渋滞を生じるようだ。ましてや起承転結を尊重する日本ならば、メールの前置きの問題はより大きなものになっていくだろう。twitterがソフトバンク社のビジネスに成功をもたらせば、日本のビジネスコミュニケーション文化にも変革が生じるかもしれない。

#いつもよりコンパクトにお届けしました

#パゴニス中将の湾岸戦争での活躍については「山動く」(同文書院インターナショナル  1992/11)に詳しいです。なお3インチ×5インチカードは湾岸戦争よりずっと前の1965年、パゴニス中将が中尉だったときに編み出されたものです。上司の中佐に仕事の報告をするために長い順番を待たねばならず、しびれを切らしたパゴニス中将がカードにメッセージを書いて秘書に押し付けて帰ってきたら、後日「了解」と書き込まれたカードが届けられ、それ以後カードを活用するようになったという記述があります。twitter誕生より50年前の偉業ですね。

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