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日本はデータセンターのクラウド化を目指したらどうだろうか

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昨日はクラウド型データセンターを日本に誘致するメリットについて考えました。クラウド型データセンターはその特徴として管理運営コストを下げるように設計されています。例えばコンテナ型データセンターという今のトレンドは、現地でのキッティング(ラッキング+ケーブリング+試験など)を経ずして投入できるようにするという目論見があります。

そういったデータセンターを誘致しても日本ではコンテナを積み上げて面倒を見るだけであり、IT技術者が育成できるという望みは薄いと思われます。電力、熱やハードウェアの所在に関する管理運営ノウハウは貯まるかもしれません。また、そのデータセンターから提供されるサービスがクラウド的なものであれば多くの技術者が日本に来て駐留するということも少ないと思われます。世界各地に部品のスペアを置いて交換を行わせるということも、データセンターの運営規模によってはコンテナごと本国に送り返して新しいコンテナと交換する、ということが行われる可能性が高いと思われます。

さてそれでは日本はデータセンターの誘致をあきらめたほうが良いのでしょうか。狭い国土、途上国と比較すれば高い人件費、地震の発生頻度などあまりよい材料は見つかりません。

しかしながらクラウド型データセンターの誘致でなく、データセンターというサービスのクラウド化であれば勝ち目があるのではないかと思っています。

データセンターというサービスはサーバを預かり運用するのが仕事です。それに対して企業のニーズはサーバから供給されるサービスを安定して利用したいという点にあります。企業がオフィスでサーバを運営するには電力の問題、床の加重の問題、冷却の問題、人材の問題など多くの問題が生じます。そこでデータセンターに預ける、ということが一般的に行われます。

クラウドコンピューティングにより、一般的なコンピューティングパワー、すなわち計算とストレージは誰でも安く手に入れることができます。米Amazonのような企業からはロードバランサー、CDNのサービスも提供されていますし、アプリケーションファイヤーウォールをサービスする企業も存在します。

しかしあまり一般的でないコンピューティングパワーを手に入れようと思った場合はどうすればよいのでしょうか。例えば物理演算という計算があります。シュミレーションなどに利用されますが、物が落ちたり跳ね返ったりという計算を行うものです。これはこの目的に特化したハードウェアがあり、それを利用した場合は非常に短時間で計算を終えることができますが、汎用の計算をすることを目的にデザインされたCPUを用いると多大な時間を要してしまいます。

こうした特殊なハードウェア、他には暗号化/複合化や動画のエンコード/デコードなどが思い浮かびますが、こうしたコンピューティングを行いたいというニーズに対して、クラウドベンダーから提供される汎用的なコンピューティングパワーはパワー不足の感が否めません。もちろん、多くのサーバを一時的に投入することで分散処理により解決することもできると思われますが、反復的にその処理を行う必要があるのであればその計算に特化したハードウェアを利用したほうが効率が良さそうです。

となるとそうしたサービスがまたクラウド化されると思われますが、そのベンダーはそのハードウェアをどうするのでしょうか。自力で調達し、どこかのデータセンターを借りて運営しなくてはなりません。また、利用者が自力調達するケースを考えてみても、その他の一般的なコンピューティングがクラウド化されることで、自社データセンターを持たないという企業も増えると思われます。すると一部の目的のためにデータセンターを持ったり、契約したりしなくてはなりません。このニッチなサービスを日本で統合的に行えるようにしたらどうなるでしょう。

DellでPCを注文するように、非常にマニアックなパーツをネットから注文します。しばらくするとサーバの構成案、それにより提供されるスペックや運用コストが提示されます。多少の調整を経て承認すると、一両日ほどでサーバが投入されます。

そのようなサービスを提供するには、空輸または海運のアクセスの良いポイントにデータセンター兼キッティング工場を作り、高速ネットワークと良質な電力を供給することが望まれます。

メイドに侵略されてマニアックな電気店が減ってしまったと言われますが、秋葉原は今でも世界的な電気街として知られています。それは秋葉原に行けばPCから無線、センサーなど様々なパーツが揃うという特徴が大きいと思います。売る側からすれば人が集まる秋葉原に売りたいと思い、買う側もパーツが充実している秋葉原に探しに行きたいと思う心理が働き、秋葉原は電子部品のハブ拠点の役割を果たしています。

同様に、何かの目的に特化した計算を行うハードウェアが日本のどこかにたくさん集まり、インターネット越しにサービスとして利用できるとなれば、それが集客の材料になりうると考えられます。ひとつひとつの仕事のボリュームはさほど大きいものと思えませんが、世界中の特殊計算を日本に集約することを意図してロングテールなビジネスとして取り組めば大きなボリュームになるでしょう。

商流を管理するコールセンターはクラウド化されるかもしれませんが、組み立てや運用の技術者はコンテナ型データセンターよりも大きなボリュームで必要になるでしょう。ただしまったくのバラバラで運営されるのではなく、一箇所に集まることで効率性は発揮されると思われます。チップが実際に稼動する環境で試験を行いたいという人が増えれば評価環境が必要になりますし、ホテルもできます。

アメリカはコンテナ型データセンターのようなスケールの大きな話が得意ですが、日本は摺り合わせが必要となるような緻密な話が得意です。アメリカ型のアプローチで掬い上げにくいような目的特化型のコンピューティング環境のクラウド化については日本の得意分野なのではないかと思いました。

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