自分の友人が結核で入院中です
さる芸能人の方が結核だったとのことで、感染が広がっていたら大変だということがニュースになっています。たまたま自分の高校の同級生も結核で入院中です。
とはいえしばらく接触しておりませんでして、久しぶりにメールが来たので何かと思ったら「入院した」との連絡でした。自分は以前にB型肝炎で名古屋のとある病院に入院したことがあるのですが、その病院では古くから結核の専門的な治療を受けられることで知られており、今でも結核用の病棟があります。自分が肝炎で入院していた時に看護婦さんから聞いた話では、
- 結核病棟には一般病棟の人が迷い込まないようになっている(この先に行くな、という扉がある)
- 重い患者さん用の部屋は気圧が外よりも低い(菌が外に出にくい)
- 重くない患者さんの部屋でもエアコンが一般病棟とは別配管になっている(エアコンを通して菌が撒き散らされない)
- 廊下かどこかに紫外線を出している(菌が死ぬ)
- 看護婦さんの危険手当は薄い(たぶん冗談。本当かどうかは調べられず)
というような感じで「なるほど」と思う話をしてもらったことを覚えています。
気ままな入院生活は慣れたら慣れたで楽しいのですが、それは近所のコンビニの新作のお菓子を楽しみにしたり、週刊誌を読んだり、庭の花々を見ながら散歩したりできるからです。お医者さんから「外出禁止」を言い渡されてしまった場合の生活は大きく制限を受けてしまいます。自分は「安静」の経験がありますがつまらないですね。自分は外出禁止の経験はありませんが(外出禁止は病棟内を自由に出歩けるので安静のほうが程度が重いですが)外出禁止になった患者さんは売店から注文表がもらえるのでそれを通して雑誌やお菓子を調達すると聞きました。売店は気分転換になりますし、普段は会わない別の病棟の人としゃべったりできてなかなか良いです。ですので売店に行けないのは若干辛そうですね。病棟内での娯楽となるとパソコンの持込が許可されているとかなり快適と思います。入院中の友人はパソコンを買ったと言っていました。ネットも繋がるそうです。それができる若い人はいいですが、パソコンが苦手な方は他にテレビくらいしか楽しみがありません。
自分が見たテレビのニュースというか、民放だったので報道型バラエティの様相を呈した”いわゆる”ニュース番組では、今回結核であることがわかった芸能人の方のステージを見に行ったら感染の危険があるというところが強調されていました。正確なリリースはこちらになります。
芸能人の肺結核の発生に伴う接触者調査、健康診断および健康相談の実施について 東京都福祉保健局 <http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/hodo/presskansen090406/index.html>
伝染病の対策の基本は封じ込めだと思いますし、結核は今もなお危険な病気なので過剰反応するくらいでちょうどいいかもしれません。しかしながらこれが行き過ぎると「お見舞いに行くと感染が怖いからやめておこう」とか「退院したばかりの人は怖いからしばらく近寄らないでおこう」と判断してしまわないでしょうか。私の祖母は結核が原因で体調を崩して亡くなっています。結核そのものは乗り切ったのですが、肺を悪くして体力を落としたことで60歳過ぎくらい、自分が1歳くらいのときに亡くなりました。存命中には万一の感染を考え、孫である自分や兄、姉を近寄らせないように言っていたとのことで色々と辛い病気だな、と思います。
今回感染してしまった芸能人の方も、私が見た番組ではステージから菌をばらまいたような悪い印象を受けました。しかしこれだって別のステージで最前列に座った観客から菌をもらった可能性だってあります。お笑いのステージですので観客も笑うでしょう。マネージャかもしれませんし、レストランでたまたま隣り合った人かもしれません。感染症はこうして人から人へ感染していくものですので、誰が悪いということも無いはずです。この芸能人の方が快復してテレビの前に戻ってきたら、「申し訳ありませんでした」と頭を下げるのでしょうか。となると結核になったらみんな頭を下げないといけないことになります。検査や問診で迷惑をかけることになるでしょうが、その人に感染させた人は、そのまたその人に感染させた人は、と考えていったらキリがありません。そして自分もいつ感染させる側になるかわかりません。
おそらく自分の友人含め、今結核と闘病中の方の中には感染発覚時に周りの人に理由を話して体調を聞くなどして肩身の狭い思いをしている人が少なくないと思います。感染症は自分の責任でなるものではなくて自分自身も知らずに感染させられてしまうということがあります。海外旅行で衛生環境の悪い国で生水を飲んで感染症を日本に持ち帰るといったことは困りますが、そうでない場合は本人だけが悪いものではありませんので、できるだけ居心地の悪さを感じさせないようにしてあげたいものです。自分の例を挙げると、生まれた当時はB型肝炎の母子感染防止事業が始まっておらず、当然産婦人科のほうでもケアされなかったようで当然のごとく母子感染しました。いや、とりわけ居心地の悪さを感じたことはほとんど無いですが、医療費をじゃぶじゃぶと使っていた時期があります。その節は国民の皆様にお世話になりました。それどころか医療の進歩によりウイルス感染の心配なく子供を授かることができてワクチンを開発された方には感謝しております。
自分はそういう立場ですので、今結核と戦っておられる患者さんがこの芸能人結核感染のニュースを見ていたらどんな気持ちだろうか、と考えてしまいます。特に入院中のテレビは大きな楽しみですので、ベッドサイドのカードテレビや最近一大勢力となりつつあるワンセグ放送に「結核」の文字はできるだけ映って欲しくありません。見たら凹むんじゃないでしょうか。いや、自分が同室になった入院患者さんにはポジティブな人が多かったせいか、ニュースを見て病室で爆笑するという光景ばかり浮かんでしまいますが……。
上でも言いましたが、結核の感染が広がることは社会に対して重大なインパクトを与えることですので、こうしてニュースに取り上げられて、結核が沈静化どころか最近また増加傾向にあることなどが知られるのは良いことだと思います。しかし希望としては、それとともに「結核はどうすると感染し、どうなると危険なのか」についても多くの人が知識を深め、病気の状態によっては入院している人のところにお見舞いに行っても差し支えないことなども知っておいたらどうでしょうか。自分に子供が生まれたときにも「あとが残ったらかわいそうだしBCGやらなくてもいっかー」なんて軽く考えることもなくなるでしょうし。
また、病人にとってやはりお見舞いは嬉しいものです。確かに私も結核というと感染した場合のリスクが大きく、安易に近寄ってはいけないというイメージを持っています。しかしお見舞いに行けるかどうかは主治医に聞いて確認し、OKが出ることも多いそうです。許可が出ているならば、注意事項などを聞いてお見舞いに行ってあげたら患者の方も気分が晴れて治療にプラスになるんではないかと思います。
最後に、不景気ということで診療抑制(お金がもったいないので病院に行かない)が増加するのではないか、という指摘を聞くことがあります。結核については各都道府県などで若干対応に違いがあるものの、基本的には手厚い公的支援を受けられる病気です。国や自治体から見れば爆発的な感染が発生したら医療費がとんでもないことになりますし、あってはならないことですので、気軽に治療を受けられる体制を整えることで初期に封じ込めてしまおう、というところでしょうか。予防に勝る治療なし、ですね。ここに具体的な支援まで書くと後々に制度が改定されたときに誤った情報が残ってしまいますので下にリンクだけ紹介します。東京都だとこんな感じです。
結核医療費助成について 東京都福祉保健局 <http://www.fukushihoken.metro.tokyo.jp/iryo/josei/joseinituite/index.html>
ちょうど自分の友人と亡くなった祖母が結核であり、また自分もB型肝炎のキャリアであることから個人的な思いを多く含んだ意見を述べさせていただきました。医療という分野に関する話題ですので間違いがあってはいけないと色々調べながら書きましたが、おかしな点などありましたらコメントにてご指摘いただければ幸いです。結核を始め世のいろいろな病気に悩む皆さんのご快復をお祈りします。慢性のB型肝炎は今の医学水準だと完治の見込みが薄いですけどね……。