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テレビ番組の笑い声をネットに例えるなら

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テレビを見ていていまいち笑えないシーンがあった時に「本当におもしろかったのかな?」と疑問に思うことがあります。そういった場合、テレビ番組の中にスタジオなどの笑い声が埋め込まれていると「笑ってもいいところだったんだな」と確認する事ができます。

テレビ番組の笑い声というと古いところではドリフの笑い声が思い浮かびます。おそらくプロと思われる女性の笑いっぷりで「ここが笑うところ」というところが強調されていました。その後、番組スタッフの笑い声が強調されるようになったのはおそらく「オレたちひょうきん族」あたりではないかと思います。テレビ局で働いている人=いわゆる「業界の人」が笑うところなのできっとそこが最近の笑いのセンスなのだろう、という形で笑うポイントに関する情報が提供されるようになりました。たとえば視聴者が知らないような芸能人の内輪ネタを暴露するようなシーンでスタッフが笑うと、視聴者が「きっと何か浮気でもしたんだろうな」などと背景を想像した上で笑うというような形になります。

また関西以外の人ではなじみが薄いかもしれませんが、吉本新喜劇で劇場に来ている人の笑いはそれよりも更に笑うポイントに関する情報が多くなっています。ある芸人がボケをかますパターンはほぼ決まっているためにボケの準備をした時点で観客が笑います。ボケを知らない人も周りがクスクス笑い始めたことから何かを察知し、ボケが決まって大笑いする、という光景をよく見かけます。

このように考えるとまるでテレビ局が笑いを押し売りしているようですが、周りが誰も笑っていない状態で自分だけ笑うというのはなかなか難しいものです。実際には自分が笑うのに抵抗がないようにしてくれている、というくらいのものと言えそうです。

Webサイトの場合はどうでしょうか。

古くはアクセスカウンターや相互リンクというのがおもしろいサイトのバロメータになっていました。アクセスカウンターの切りの良い番号をゲットした人は掲示板に書き込みしてくださいとお願いするサイトも数多くありました。個人のサイトではその切りが100くらいであり、人気サイトだと1000や10000という大きな数字になっていました。サイトの来訪者は自分の目には見えない来訪者を想像して「このサイトは人気があるからおもしろいだろう」と予想していたと言えます。

そういったWeb1.0的な時代は過ぎ去ってWeb2.0時代が来るとバロメータが交代します。ブログであればコメントやトラックバックの数やRSSの購読者数が人気の大きさを示しますし、ブログコミュニティに属していればランキング情報がわかります。また、ソーシャルブックマークの数やコメントの内容はブログ以外のあらゆるWebサイトの人気を横断的に表しています。

自分のブログが人気なのかどうなのか興味がない人はこういった情報をブログ内に埋め込みません。反対に自分のブログを多くの人に読んでもらいたいな、と考える人はいくつかの努力をします。例えば「人気ランキング参加中。先月は●位でした。ありがとうございます!」というようなメッセージを入れたり、被ブックマーク数を見えるようにしたり、もらったトラックバックにお返しをして固定ファンを増やそうと努力したりします。

コメントやトラックバック自体は他人が行なうものですので、基本的に自分がおもしろいコンテンツを作ることでしかそれらを増加させることができません。被ブックマーク数が見えやすいようにするなどサイトを手入れする努力はある程度の効果を生むでしょうが、サイトのコンテンツ自体がおもしろくなければ人気を集める事は難しいものです。

あるWebサイトを見たときに他人がどう感じたか知ることができる、という点が最近のWebの世界のおもしろいところであると思います。反対に、テレビ番組の笑い声は作り手の意思で操作することができますし、スタッフの笑い声は作り手の意見であって受け止める側がおもしろいかどうかとはまた別と言えるでしょう。

その点、ネットと動画が組み合わされたニコニコ動画ではひとつのコンテンツを多くの人が見て、そのコメントを互いに知ることができます。テレビがおもしろくなくなった、と言われる一方でニコニコ動画が人気を博している理由のひとつはそこにあるように思います。

テレビは情報を配信する技術であり、ネットのように相互に情報をやり取りすることに向いていません。そのため今のテレビの形態では視聴者の正直な反応を知ることは難しいでしょう。最近テレビ局が番組と連動したブログを充実させたり、携帯メールで視聴者の感想を集めたりという企画が多くなってきています。これまで視聴者はテレビ局から価値観を押し付けられるような形でしたが、これからは視聴者が自分の気持ちをテレビ局に逆流させるというのが主流になるかもしれません。

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