私もB型肝炎患者だったりします
私もB型肝炎の患者です。母子感染でウイルスを保持しており、22歳までキャリア化していたのですが、慢性肝炎に移行しました。とは言え炎症の度合いが低いため3ヶ月に1度ほど経過観察をしているのみです。
私は医師ではありませんので以下の内容には誤った内容が含まれるかもしれません。その点ご承知の上お読み下さい。なお、家族に肝炎になった人がいたような記憶がある場合、家族感染している可能性がありますので、調べた事がないという方はお早目の受診をお勧めします。
B型肝炎についてはこちらが詳しいです。
厚生労働省:健康:結核・感染症に関する情報(B型肝炎について)
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou09/01.html
さて、秋葉原で起きた通り魔事件で救援に当たった方が、B型肝炎の患者の方の血液に触れた可能性があるそうでニュースになっています。私の元主治医は「適切に処理していない血液を輸血されるくらいなら水道水を注射されたほうがいい」と言っていました。私に感染症の危険性を教えるためにわざと極端なことを言ったのだと思いますが、それほど人は様々な感染症とつきあいがあるということなのでしょう。
日本国内にはB型肝炎ウイルスを持っている人が150万人いると言われます。約100人に1人という計算になります。C型肝炎では200万人と言われています。お隣中国では1億2000万人の方がウイルスを保持しているそうで、そのうちの3000万人が発症しているそうです。
「発症」といったのは、B型肝炎ウイルスは保有しているだけでは病状が出てこないからです。B型肝炎には2つの感染の仕方があります。ひとつは子どもの頃に感染するタイプです。子どもの頃の免疫がしっかりしていない時に感染すると、ウイルスと共生してしまいます。私もこのタイプです。多くの人は大過なく過ごしますが、一部の人は免疫が強まる二十歳前後にウイルスを排除しようとする体の働きが強まり、ウイルスもろとも自分の肝臓を破壊して肝炎を発症します。だらだらと長年続くこともあり、ウイルスを大方排除する事もあります。なお、今のところB型肝炎ではウイルスが完全に体から消え去ることはありません。炎症が長い間続くと肝硬変など悪い症状を引き起こします。
もうひとつの感染の仕方は大人になってからの感染です。こちらはすっかり免疫ができあがったところに感染しますので、急激にウイルスを排除しようとします。これが急性肝炎で、あまりにも肝臓の破壊の度合いが大きいと命を落とす事もあります。そうなることは稀ですし、今回報道されたようにウイルスと接触してすぐに的確な対処をすればそもそも肝炎を発症せずに済みます。大人になってからの感染は一過性のもので済み、私のような慢性肝炎になることは多くありません。ただしウイルスの種類によっては慢性化しやすいものもあるそうです。一過性の場合は症状のピークを超えればすっかり良くなります。また、免疫を獲得して感染しにくくなります。
実はB型肝炎は絶滅しつつある病気です。というのも子供の頃にウイルスに感染する最大の原因である母子感染について防止策があるからです。妊婦さんが健診でウイルスのチェックを行い、B型肝炎への感染が認められた場合は赤ちゃんに感染しないような治療方法があります。これにより、1980年代初頭から後に生まれた人で生まれつきB型肝炎に感染している人は極めて少なくなりました。そうです。自分はぎりぎりで生まれつきのB型肝炎患者になってしまったレアな人なのです。貴重です。
海外では子どもに対してB型肝炎ウイルスワクチンの予防接種を一斉に行っているところもあり、そういう国では新しい感染者がどんどん減る事になりますので、追い詰められつつある病原体であると言えます。そのうち天然痘みたいに亡くなってしまうかもしれません。最後の保菌者と言われる日が来たら嫌だなぁ。
母子感染以外にB型肝炎を広げたのは予防接種の回し打ちだと言われています。少し前にC型肝炎については国からの補償が認められましたが、B型肝炎についてはまだ認められていなかったように思います。肝炎ウイルスに感染中の患者は国内に350万人と言われますが、その規模で政治団体と化してしまったらかなりの影響力を持つことになりそうです。そういった意味では手厚い保護が受けられそうな雰囲気のある病気です。
また、中国の1億人あまりの患者は魅力的な市場ですので、製薬会社も意欲的に治療薬を開発していると聞きます。ウイルスの構造がHIVと似ているからなのか何なのか、ゼフィックスというHIVの治療薬をB型肝炎でも用いますので、共通して使えるものがあるとすれば患者にとってプラスの要素として働きそうです。
私がこの病気になって嫌なことはたくさんありましたが、良かったんじゃないかと思うこともあります。一病息災という言葉があるように、定期的に病院に行き、お酒をのまなくなり、規則正しい生活を心がけるようになりました。最近夜更かし気味ですが。
また、以前治療のために病院に入院した時に死にかけたお年寄りの方から色々とおもしろい話を聞くこともありました。若い時に事故で両足を失った80歳過ぎのお爺さんなのですが、胃がんになって手術をするということで私の隣のベッドに寝ていました。ガンだというのに明るくて「プレス機に両足を挟まれた時に人生オワタ\(^o^)/って思ったから、何があっても怖くないよ。自分の命なんてその時に完全に失われてもおかしくなかったわけだし。おまけみたいなもんかな。」とかなんとか。おまけで30年くらい生きてるみたいですけど。お爺さんが心の底からそう思っていたかどうかわかりませんが、病気で不安な気持ちになっている自分には心強い言葉でした。
そう。入院中に勉強してソフトウェア開発技術者に合格していなかったらそのままシステムアナリストに合格できていなかったと思いますし、卒業旅行に行って急性アル中で死んでいたかもしれません。そうしたらたぶんこのブログも書かれていなかった事でしょう。人間万事塞翁が馬と言いますが、何がどうプラスに働くかなんてわかりませんので、何かよほど嫌な事や困った事があってもなんとかできる時が来るように思って生きています。
社会人生活開始を2か月後に控えて期待に夢を膨らませている時に入社前健診の結果がおかしいということで医師に呼び出されて「死ぬ事もある病気だけど気にしないで。たぶん治療法が飛躍的に進歩しないと完治しない。症状が治まってもウイルスが体から排除される事はない。仕事はがんばりすぎないで。健康な人と同じだけ働けると思っていると後で凹むからもしれないから期待しないように。もしバリバリ働いてみて大丈夫だったらラッキーだと思うように。エイズと同じように感染するから異性交遊は気をつけて。奥さんにはワクチン接種必須。子どもが生まれたらワクチン接種。あと、血が出る怪我をした時は周りの人に『血液に触れないで下さい』って言うんだよ」と言われましたが、それでヤケになって他人を傷つけてやれとかそういう気が起きたかというとそんなこともなかったように思います。その先生はとても悪く言うタイプでして、私は今普通に生活しています。
最後に、病気をしている人に「かわいそう」と言ってはいけないというのは本当だと思います。同情するのはどこか「こうはなりたくないねー」というニュアンスを感じさせてしまう事があります。「病気なのにがんばってるね。えらいね」というような言葉のほうが、病気と、病気と闘うその人との両方をひっくるめて存在を認めてあげることであり、聞き入れやすいのではないかなと思っています。(※励まし厳禁の病気もあります)ちなみに病人同士が病院で会話する時は不健康なほうが強いので「ASTが1000ってすごいねー」というようなのが褒め言葉になります。そういった年寄りじみた性質をこの若さでゲットしてしまったというのも、病気になってよかったことのひとつと言えるかもしれません。