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画像と文章とアスキーアートの情報量

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画像と文章とアスキーアートの情報量について考えてみました。

システム開発の過程では数多くの文書が作成されます。特に提案書と操作マニュアルは画像を多用するために1ファイルで10メガバイトを超えることも珍しくありません。提案書も操作マニュアルも印刷時の見栄えが重視されるものですので画像の解像度を落とすことができず、巨大化してしまいがちです。

それとは異なり設計に関するドキュメントは設計内容が伝われば良いものですので、できるだけ画像の容量が小さくなるように工夫します。例えば画面ショットをクリップボード経由でWordやExcelに貼り付けるとBMP画像として保存されます。これは画像の精度は最高ですが容量は大きくなってしまいます。別のソフトでJPEGにしてから挿入します。

手持ちのMicrosoft Wordで今確認してみたところではこのような感じでした。

 

BMP画像

901KB

JPG画像

57KB

貼り付ける元の画像の容量(640*480px)

 

ビットマップイメージオブジェクト 

2205KB

BMP画像を挿入

397KB

JPG画像 を挿入

78KB

空のファイル 11KB


貼り付けた後のWordファイルのサイズ

ということを比較していて気になったものがあります。アスキーアート(AA)のサイズです。

最近「やる夫が○○」というシリーズが流行していますが、その中では効果的にAAが使用されています。おもしろいところはおもしろいAAを、やる夫が本気を出した事を伝えたいときはまじめな顔のAAを使用して読者に感情移入させるのは、学校の授業でおもしろおかしい話をしては勉強の内容に興味を向かせていた先生達のことを思い出します。

あのアスキーアートの情報量はどれくらいなのでしょうか。有名どころでポルナレフのAAを参考に考えてみます。

 

                            やつを追う前に言っておくッ!
                    おれは今やつのスタンドをほんのちょっぴりだが体験した
                  い…いや…体験したというよりはまったく理解を超えていたのだが……
         ,. -‐'''''""¨¨¨ヽ
         (.___,,,... -ァァフ|          あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!
          |i i|    }! }} //|
         |l、{   j} /,,ィ//|       『おれは奴の前で階段を登っていたと
        i|:!ヾ、_ノ/ u {:}//ヘ        思ったらいつのまにか降りていた』
        |リ u' }  ,ノ _,!V,ハ |
       /´fト、_{ル{,ィ'eラ , タ人        な… 何を言ってるのか わからねーと思うが
     /'   ヾ|宀| {´,)⌒`/ |<ヽトiゝ        おれも何をされたのかわからなかった…
    ,゙  / )ヽ iLレ  u' | | ヾlトハ〉
     |/_/  ハ !ニ⊇ '/:}  V:::::ヽ        頭がどうにかなりそうだった…
    // 二二二7'T'' /u' __ /:::::::/`ヽ
   /'´r -―一ァ‐゙T´ '"´ /::::/-‐  \    催眠術だとか超スピードだとか
   / //   广¨´  /'   /:::::/´ ̄`ヽ ⌒ヽ    そんなチャチなもんじゃあ 断じてねえ
  ノ ' /  ノ:::::`ー-、___/::::://       ヽ  }
_/`丶 /:::::::::::::::::::::::::: ̄`ー-{:::...       イ  もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ…

 

セリフありの状態で、文字の量が約1400バイトとなります。セリフを削ったところ約700バイトとなりました。画像と比較をしてみますと、下のサイトに掲載されているPNG画像の容量が約16000バイトでした。約20倍の差があります。ただしリンク先の画像はカラーでしたので、JTRIMというフリーの画像編集ソフトで白黒に変換しますと約3500バイトとなります。こうなるとおよそ5倍の差しかありません。

2ch全AAイラスト化計画よりポルナレフのイラスト
http://riceballman.fc2web.com/AA-Illust/Data/Porunaref.html

この5倍の差を大きいと感じますでしょうか。小さいと感じますでしょうか。私はかなり小さいように感じました。AAが予想よりも多くの文字列から成立しているというよりも、画像の圧縮アルゴリズムの高性能さに驚きを感じます。3500バイトというと原稿用紙に日本語で9枚弱ですね。

さて実際にはAAが伝える情報はもっと多くなります。このAAを見て「ヴァニラ・アイスは最高の敵だった」ですとか「亀は最後どうなったんだっけ」などと思いを馳せることができる人も多くいるでしょう。そうなるとAAは記号のような役割を果たす事になります。記号のような役割というのは、♂という記号を見て「男」というイメージが浮かび、さらに「男性、または動植物が雄性である意を表す(goo辞書より)」という情報が伝わることを言います。

それを踏まえてwikipediaの記述を調べてみますと約6500バイトもの書き込みがあります。これを参考値の1つとして考えるとポルナレフのAAは700バイトでその10倍の情報を喚起することができるとも言えます。

ジャン=ピエール・ポルナレフ - Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B8%E3%83%A3%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%94%E3%82%A8%E3%83%BC%E3%83%AB%E3%83%BB%E3%83%9D%E3%83%AB%E3%83%8A%E3%83%AC%E3%83%95

更に重症のファンで、ジョジョシリーズの単行本が脳裏に焼きついているという場合を考えて見ます。

ジャンプコミックスのサイズは17.6cm x 11.2cmであり、1ページを仮に96dpiのBMP画像だとすると1枚が約800キロバイトになります。単行本1刷あたりは約200ページですので160メガバイトとなります。これがシリーズ全体(ストーンオーシャンまでとして)に渡ると80巻分ですので12.8ギガバイトとなります。これはできるだけ大きく見積もった値になります。更に上を考えれば脳内でモーション補間してフルHD1080/60pの動画に7.1CHのリニアPCM音声つきで再生される人もいるかもしれませんね。そういう私自身がキャラクターの動きっぷりを想像するのが好きなのでなので読むのがとても遅いです。

小さく見積もった場合として、ポルナレフが出演する巻を数えてみます。第三部のスターダスト・クルセイダーズが16巻、第五部の黄金の旋風が17巻の計33巻分になります。ここまでで計算してみると33*160で約5.3ギガバイトになります。第三部の出番がページ数の比率にして10%、第5部が同じく5%として計算をすると更に減少して(16*0.10+17*0.05)*160で約257メガバイトになります。

これは1ページあたりの容量を96dpiでスキャンして無圧縮の状態を想定していますので、JPEGやPNGにより10%に圧縮できるとすれば25メガバイトというのがポルナレフにより想起される情報量の1つと言えるでしょう。

こち亀の57巻「文豪・両津勘吉先生の巻」には「『目の前に蒸気機関車が100台並んでいます』というのは小説では1行で済むが漫画でやるとアシスタントが大変な思いをする」というような記述がありました。確かに我々は蒸気機関車が100台あるところをなんとなく想像する事ができますが、それを絵で説明しようとしたら大変なことになります。また、冒頭の文と関係してきますが、システム間の相互関係などは言語で説明しようと思うと大変なことになりますが、図に書けばさらさらと5分くらいで完成させる事ができる場合もあります。

文字ベースの掲示板でのコミュニケーションに画像を用いようと思うと、別のサイトにアップロードしてそのリンクを示してと大変な思いをします。リンク切れを起こしてしまう事もあります。それがAAの場合は言語とフォントの環境さえ整っていればコピペで簡単に図表を示す事ができます。(といってもゼロからAAを起こすのには職人芸が必要ですが)

AAの実態は画像より簡略化された文字列の集まりでしかないのですが、例えばポルナレフであればジョジョと言う世界観を共有している仲間同士で使うことによってAAが表現する画像単体の情報量をはるかに上回った情報を想起させることができます。当然ジョジョを知らない人が見たらただの男性にしか見えませんので、そういった人を置いてけぼりにしてしまう危険が伴います。そうしないために「この流れなら使っても大丈夫」というような空気を読む力も必要であると言えます。

KYというほんの2文字のアルファベットが「空気読めない」や「朝日新聞記者のサンゴ破壊および捏造報道事件」を指し示すというのも少ない情報量で多くの物事を伝える方法の1つです。そういった略語が流行るのもAAでコミュニケーションが成立するのも、日本人が文字コミュニケーション上手であることの現れなのではないか、と考えています。

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