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システム開発の守⇒破⇒離

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能や剣道の世界には守破離という考え方があるそうです。情報システムの世界での開発トレンドの変化にもつながる考え方なのではないかと思いました。

情報システムの構築においては、なんでもかんでも自分で作りこむことの非効率さからフレームワークやパッケージを利用することがあります。フレームワークというのは枠組みと訳されます。あらかじめ準備された使いまわしがしやすいアプリケーション部品を組み合わせることで、新しく作り上げる対象を少なくするものです。パッケージは、ひとつの完成した情報システムであり、それを拡張したり改造したりして目的の情報システムを開発することにより、新しく作り上げる対象を少なくするものです。

このようにフレームワークで開発された情報システムは、それぞれ部品を組み合わせて作ったユニークなシステムになります。一方パッケージを使用した開発はある程度似たりよったりのものになりがちです。そうすると、先行して導入した企業の導入効果を見定める事で採用の可否の判断材料にすることができます。

そもそも『守』というのは先人の教えを守ることですので、守、以前の段階があります。それは旧来行われていたスクラッチの開発に相当します。その中で培われ確立された手法であるパッケージ開発が『守』であるとすれば、パッケージでは実現できないような情報システムをフレームワークといった技術やアジャイルといった手法で構築する事が『破』ではないでしょうか。これは自動車で言うと大衆車とF1の違いに例えることができるでしょう。

大衆車は同じような車体が大量生産されます。T型フォードの時代はまさしくベルトコンベヤーによる画一的な生産でしたが、趣向が多様化した現代ではそれぞれオプションや色などが違うためまったく同じ車を作るという事は少ないかもしれません。基本となる車台を大量生産し、アクセサリーパーツを要望に応じて交換するという生産方式は、パッケージを利用し、そのインターフェースに合わせた部品を追加開発して情報システムの構築を行うということに似ています。

F1は大量生産するようなものではありませんので、エンジンからシャーシまで1台1台が手作りに近い形で生産されます(たぶん)。その年その年のレギュレーションに合わせてマシン仕様も変えなくてはいけないですし、新たな基礎技術が生まれるたびに、いち早く実用化していくことが重要になります。本田宗一郎氏は「レースは走る実験場」だと言ったそうですが、F1で実用化された技術の中には大衆車の燃費向上に寄与したような技術が多くあるそうです。同様に、こうした先進的な開発の中でも効果的なものが部品化されてフレームワークに取り込まれたり、良い効果を生んだシステムを基礎としてパッケージが作り出されることもあるでしょう。

では、『離』となるとどのようなものになるのでしょうか。フレームワーク開発でもスクラッチ開発でもないような開発、というと難しく感じます。ここは『離』らしく考えを飛躍させると、開発しない、ということも考えられます。そうすると誰かが作ったサービスを寄せ集めて利用するという形態、すなわちSaaSになるのではないでしょうか。大衆車、F1と比較するならばタクシーやバスと言った輸送サービスが相当するでしょう。

SaaS……。ありきたりなオチですね。しかも1年半も昔に同じようなタイトルの記事を見つけてしまいました。

ソフトウェア開発の守・破・離、その先の未来 - @IT情報マネジメント
http://www.atmarkit.co.jp/im/carc/serial/lookingfor10/lookingfor10.html

では無理してもうひとつくらい『離』を考えたいと思います。それはSIerにとっての「開発しない」すなわちEUC(エンドユーザコンピューティング)の隆盛……は無いか。

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