群馬県で花火工場内の民家で火事があり、薬品庫に延焼、爆発して
コンクリート片が周辺に飛散して民家を破壊したそうです。
けが人が出たとのことですが、幸いにも亡くなった方はおられませんでした。

私がよく参考にする失敗データベースを「花火」で検索してみました。

煙火工場の大爆発

失敗データベースによると、こちらの鹿児島の事故では
爆発の事故が大きすぎて正しい事故状況はわからないそうです。

亡くなった方もおられたこの大事故の原因は、推定によると

  1. 本来は火薬を格納してはいけない薬品庫に火薬があった
  2. 限度を超えて大量の火薬を貯蔵した

の2つだそうです。

今回のケースでは薬品庫に火薬を置いていなかったため、
大きな事故に至らずに済んだそうです。
鹿児島の事故が2003年4月ですので、そこから4年が経過しています。
4年前の事故が教訓となって対策が徹底していたのでしょうか。

花火師さんにとって「原料と火薬の置き場所は別にする」というのが
どれくらい常識なのかわかりませんが、ルールを正しく守ることによって
その効果がきちんと発揮された好例ではないかと思います。
(このことは法律でも決まっていることのようです)

この事故では、コンクリート片があたりに飛散して死者が出なかったことは
偶然だと言えるかもしれません。事実、子供の頭ほどあるコンクリートの
塊が人のいる家屋内に飛び込んでいました。しかしこれがもし火薬庫にも
引火していたとしたら、とんでもないことになっていたことは想像に難くありません。

火薬工場の最終成果物は花火です。花火は打ち上げたら爆発しなくてはいけません。
爆発しない花火を出荷しても何にもなりませんので、
花火工場に爆発物があるというのは回避できない状態と言えます。

さてそれでは「爆発事故」というリスクを何とかするためにはどうすればよいでしょうか?
一般的なリスクマネジメントの考え方からすれば、まず爆発事故による結果を分析します。
誰かに怪我をさせたり、夏の花火大会に納品するという契約が守れなくなったり、
工場という資産を失ったり、火薬取扱の免許を剥奪されたり、というようなことです。
そのような結果をリストアップした上で、そのような未来に対してどう行動するか?
という点について、以下の4つのような判断が行われます。

リスク軽減

万一の場合の被害を少なくするため、薬品庫と火薬庫を分離します。
これらを一緒にしておけば、爆発の際の被害は甚大です。
分離してお互いに引火しないように管理すれば、被害は2分の1にできます。
報道では薬品庫と火薬庫は別であり、火薬には引火しなかったとあるため、
今回の事故ではリスク軽減策が実施されていたと考えられます。
デメリットとしては作業の効率が悪くなります。工場の土地面積も多く必要です。

リスク転嫁

予測される被害を他人に任せることです。
仮に、花火を打ち上げる業者と製造する業者が別々だと仮定します。
都合の良い火薬があって、導火線により火をつけない限りは
原料を含めて最終完成品も爆発することがないとします。
そのように都合の良い花火が実在すれば、導火線と花火を別々にして納品することで
打ち上げ業者にのみ爆発事故のリスクを押し付けることができます。
デメリットとしては、危険を負う分の報酬が製造業者から打ち上げ業者に移転されます。

リスク保有

被害を自分のところで引き取ることです。
とは言え無策でリスクを保有することは度胸がいりますので
できるだけのリスク軽減策を取ることでしょう。
爆発事故というリスクは避けられないにしろ、
爆発事故による家屋や人身への被害というものは
人里離れた山奥に工場を作るなどすれば減らすことができます。
リスク回避とは逆にデメリットは特にありません。

リスク回避

花火作りをやめてしまうことです。
これにより花火製造に伴うリスクは完全に回避することができます。
活動により得られる利益よりもリスクにより失うものが大きい場合、
このような選択を取らざるを得ません。
リスク保有とは逆にデメリット全開です。

 

私の知る限り花火工場というのはかなり管理がきつい場所です。
私の地元の愛知県では三河花火という名物がありまして、
そちらの地方には花火工場がたくさんあります。

私がこれまで聞いた噂によりますと

  • 花火工場の周りは竹やぶを残す
    ⇒竹はその柔軟性で爆風を減衰してくれる
  • 化繊の服を着ない
    ⇒静電気による引火・爆発を防ぐ
  • セキュリティは刑務所並
    ⇒火薬の盗難を防ぐ
  • ものすごく綺麗にする
    ⇒火薬はある程度以上の量が集まらなければ危険ではない。
     掃除が行き届いていなくて火薬が山に積もっていたりするとOUT
  • 綺麗にするけども、掃除機は厳禁
    ⇒スイッチを入れるときのスパークで引火・爆発するから
  • だから火薬庫には電気が通っていない
    ⇒昼間に太陽の明かりで中を確認するだけ

などなど。裏づけが無いのに書くのもまずいと思って
検索したところ、花火情報館というところに似たような対策が紹介されていました。
貴重な?火薬庫の外からの見た目の画像も掲載されています。

このサイトを見た中でもへーと思ったのが
ほこりを積もらせないというところです。
花火工場ではほこりが火薬を含むため、爆発の原因になり得るそうです。

他にも花火の鑑賞ポイントなどが紹介されています。
また、花火にも命名規約があるというSE感涙の豆知識もあります。
ハンガリー記法とかそういうのが好きな人は要チェック。
『昇り小花付青紅芯紫銀牡丹』という名前だけでどんな花火かわかるのだそうです。
fncMakeLogQueryのようなものですね。

 

暑い暑い夏の夜には綺麗な花火を見て涼みたいものです。
あの一瞬のために職人さんのどれだけの努力が注ぎ込まれているのか、
そのことに思いを馳せながら見れば一層きれいに見えるのではないでしょうか。

ちなみに関西の男子大学生と言えば
今頃の季節までに何人かの女の子と仲良くなっておいて
夏休み前のテストでノートの貸し借りをするなどし、「ノートのお礼」などと称して
さりげなく淀川などの大型花火大会に誘うという王道があるのですが、
もてない私は4年間で1度も花火を見ることがありませんでした。
ええ。夏休みは思う存分バイトしました。

yohei

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コメント
元花火師 2007/07/21 23:08

花火事故の噂を聞いて、検索サイトからここにたどり付きました。

こういう火薬庫もありました。
防爆式の照明なら、ありのようです。

http://www.enka.co.jp/hiroba/frb8.htm

yohei 2007/07/22 22:24

元花火師さん、コメントありがとうございます。
防爆式という単語で検索してみると防爆式懐中電灯というものがありました。防爆式の照明も懐中電灯もスイッチの火花が飛ばないようになっていると思われます。どちらもその存在をはじめて知りました。家庭内でガスが漏れたときも換気扇をつけてはいけないと聞いたことがありますが、それも火花のせいですね。
IT業界でも常時サーバルームに滞在する人は静電気防止服を着ると聞いたことがあります。パチパチして不快なだけでなく、色々なところで厄介者になっているようです。

元花火師 2007/07/24 20:16

Yohei様、RESありがとうございます。

RESいただけるのかな?と覗きに来ました。元が先月の書き込みだし、いきなり来たので、まさかあるとは思いませんでした。


花火(火薬)の世界は、「火薬類取締法」により「製造」「販売」「貯蔵」「運搬」「消費(打ち上げ)」と、作ってから無くなるまでの取扱い等全てが規制されております。

火薬庫の例を取りますと、貯蔵できる火薬の量も、隣接する対象物(作業場、他の火薬庫、周辺の道路民家など等)との
距離でも制限されています。

花火大会で打上可能な玉の大きさも、消費の保安距離(隣接する対象物、観客席など等)により制限されています。もちろん鉄道、船舶航路、航空路などによっても制約を受けます。

花火工場は、もともとはど田舎、山中に作るのですが、開発宅地化などにより、住宅地道路公園などが近づいて来てしまいます。
変な話ですが、後から来たものが強く、花火工場は移転せざるをえなくなります。これは花火大会も同様で、打上げる玉のサイズを小さくしたり、打上場所の移動、最悪の場合中止ということになってしまいます。


火薬類の安全に関する監督官庁は、今柏崎原発で時々話題に出てくる「原子力安全・保安院」がになっています。
本年度の事故は掲載されておりませんが、ここから過去6年間の事故報告をpdfで見ることもできます。
http://www.nisa.meti.go.jp/12_gunpowder/index.html

最期に、ご存知かもしれませんが「日本の花火」
http://japan-fireworks.com/
というサイトがあります。
花火に関する情報、リンクが充実しております。花火好きの方は一度ご覧ください。トップページは分かりにくいので、サイトマップから入った方が目的の項目にたどりつけると思います。

本題からそれた書き込みお許しください。
失礼しました。

yohei 2007/07/25 00:23

元花火師さん、コメントありがとうございます。
花火工場の建築規制など、向学のために後で調べようと思っていたのですが、すっかり忘れていました。大変勉強になりました。
紹介いただいた原子力安全・保安院のサイトを見たのですが、思ったより事故が起きていない、かつ深刻でないことに驚きました。関連産業に従事しておられる方の日々の努力に頭が下がります。
いかにも危険といった「火薬」というものがあまり事故を起こさず、まさか!といった「温泉」というものが大事故を起こすというところに事故予防の難しさを感じました。深い内容でしたのでエントリにさせていただきました。よろしければそちらもご覧下さい。
[危ないと認識すれば危なくない]
http://blogs.itmedia.co.jp/yohei/2007/07/post_a912.html

元花火師 2007/07/25 20:00

私は数年前に花火の世界を離れ、今は全く違った仕事に従事しております。

群馬県の花火工場事故の噂を耳にしたもので、前にも書きましたがちょっと気になり検索したら、たまたまこのページに行きあたりました。


最近は花火の話をする機会も無くなり、興味を持っていただける方に読んでいただけるなら、と知っていることを書き込みしたくなってしまいました。

多分花火に関する最期の書き込みになると思いますが、資格・教育関係について書いてみます。


花火屋は、基本的に「日本煙火協会」に加盟しております。
(なかには非加盟店もあるようですが)


花火屋は大きく2つに分類されます。
 (1)製造と販売(消費)をする会社
 (2)販売(消費)のみをする会社
おおざっぱに言うと
(1)はほとんどが大昔から花火製造をしていた会社
(2)は産業火薬や銃砲取扱店が花火も打ち上げる
といった感じです。


花火を打ち上げる人を通称「花火師」と言いますが、花火を打ち上げるために必要な資格は、「日本煙火協会」が発行する「煙火打揚従事者」という資格のみです。
この資格を取得するためには、「日本煙火協会」に加盟する花火屋に登録して、各都道府県の煙火協会が年一回開催する講習会に参加すれば取得できます。


私が従事していた頃は1つの資格でしたが現在は、
 初心者(打揚可能な玉サイズの制限あり)
 熟練者(打揚全て)
 手筒花火のみ
に細分化されたと聞いています。

この煙火講習会の席で、基本的に全員に例のpdf資料が配布され、協会また原子力安全・保安院の方から前年度に発生した事故の報告、注意点等が詳細に報告されます。

ちなみに報告書中のに出てくる「がんろう中」という区分は、「玩弄中」:使用(消費)中というような意味です。


また、花火会社には従業員に対する製造消費等に関する保安教育も義務付けられております。


花火師も2つに分類できると思います。
 (1)煙火取扱会社の社員:花火職人(?)
 (2)たんに「打揚従事者手帳」を保有する者
(1)はもちろん一年中花火(火薬)の仕事に従事している人
(2)は本業は別にあり、花火繁忙期にのみアルバイト的に花火会社に従事したり、地元のお祭り花火等(都会以外の?)を昔から楽しんでいる団体の人達、などです。


そのほか花火会社の社員に必要な主な資格としては、
 「火薬類取扱保安責任者」
 「火薬類製造保安責任者」
 「危険物取扱責任者」
がありますが、これは全員が所持している必要はありません。
危険物に関しては、花火に使用する火薬の主原料である「過塩素酸カリウム(1類)」が主なものになります。


花火会社の社員(幹部、または交代等で)は「日本煙火協会」が主催する講習会に参加し、その席でも事故報告、対策、注意などを受けます。


「危ないと認識すれば危なくない」読みました。
私も、危ない物を扱うからこそ細心の注意をはらっておりました。極端な表現をすれば「命がけ」と言っても過言ではなかったと思います。

危険要因を見過ごせば、自分、同僚、観客に多大な被害をもたらす火薬を取り扱うのですから。
幸運にも自分の従事した現場では大きな事故も無く、怪我といったら軽い火傷を負ったくらい済みました。


花火職人には、花火見物をしている余裕はありません。大会が終了するまでの間、常に上から落ちる火の粉、風向き、現場の状況把握に終始しております。

最期の締めの花火だけは、真下から見上げ、今日も無事に終わったなと、ほっとする瞬間でした。


なんかダラダラと書いてしまい申し訳ありません。
これから花火の本番シーズンを迎えるにあたり、大きな消費事故が無いことを祈るばかりです。


(P.S.)
今は無き「香港カーブ」は乗客の目にも見える難所だったようですが、「成田トンネル」は目には見えないけれどかなりの難所みたいです。

yohei 2007/07/25 23:37

元花火師さん、コメントありがとうございます。
私は地元が愛知県ですので生で手筒花火を見たことがあります。地元の保存会の方が作っておられると聞きましたが、底が抜けて上下から火花が吹き出してしまう物もありました。保存会の方も講習などで安全について意識を高めておられる事と推察します。各人と各企業がそれぞれ認定を受けるという制度は医療の分野に似ていますね。(わが国では、認可された医師が、認可された病院に勤務するという二重登録制になっています。)
花火の場合は元花火師さんのおっしゃるとおり、被害が容易に想像できる上、自分に被害が及ぶかもしれないということが事故を減らす要因になっていそうです。情報システムの運用の現場では、コマンド1つ間違ったらどえらい事になるかもしれない状況は多々あります。しかし端末に向かってキーボードを叩いている分には「どえらい結果」に対する想像力が働きにくいのも事実です。そのあたりはIT業界が成熟に向かうための課題であると思っております。
色々と興味深い情報をいただきましてありがとうございました。大変勉強になりました。

元花火師 2007/07/27 00:27

このブログ、陽平さんがどんな方かも知らずに書き込みしておりました。
読んでいただき、また、何度もRESもいただき、ありがとうございました。


>花火の場合は、被害が容易に想像できる上、自分に被害が及ぶかもしれない

そうですね。そのように分析して考えたことはありませんでしたが、何かあった場合には「爆心地」が最大の被害をこうむりますから当然といえば当然のことですよね。


システムエンジニアに及ぶ直接的な危険といえば、トラブル時に呼び出されたり、徹夜作業になったり、会社での評価を落としたり、とさまざま考えれますが、「ストレス」「過労」以外ではまず命は落としませんものね。


花火大会をソフトウェアの世界に例えるとしたら、実績のある各種のモジュールを状況に応じて組み合わせ、リンクして使用するようなものでしょうか。

そんなモジュールを使用していても、時には、モジュールのバージョンが違っていたり、仕様が合わなかったり、ハードウェア異常、その他要因などにより、トラブルが発生することもあります。

ちょっと比喩が漠然過ぎたかもしれませんね。


ソフトウェアと花火で一番違う点は、「容易に目視確認が可能」という点でしょうね。ほぼ100%人事を尽くすことが出来ますから。


記憶違いでなければ、大昔に新幹線(集中管理室システム)がダウンした原因は、コーディングのたった一つの「.(小数点)」だったという話を耳にしたこともあります。

自分も少しソフトの経験がありますが、自分で何度見直しても、その時にはミスには気が付かないものなんですよね。


花火の世界も年々世代も時代も変わり、少しずつですが勘と経験だけを頼りにするのでは無く、文書化等による伝承も進んできています。打ち上げにはコンピュータシステムも導入されております。

 
 
投稿に「導火線を後から付ける」という話が書かれておりましたね。
リスク管理としての考え方としては正しいと思いますが、実際の花火ではという観点からコメントを付けておきます。


後から導火線を差し入れるために、花火玉にパイプを差しておき、そのパイプに後から導火線を差す手段は現在でも一部の特殊な玉では使用されております。

この方法の欠点は、そのパイプと後から差し込んだ導火線外皮との、わずかな隙間を完全になくさなければ、最悪の場合点火と同時に開発してしまう危険を伴うことです。

ですからこの手法は、その隙間を埋める安全確保の作業に手間も掛かりますし、花火の打ち揚げ方法(後述)からも、私の知る限り上空に打ち出す花火に対して使用されることは無いと思います。
水中花火(走るモーターボートから放り込む)など、長時間の延時を取った導火線に人が直接点火する場合にのみ使用されております。


打ち上げ花火がどうやって上空で開発するかというと、
(1)筒の中に打上火薬を入れる
(2)点火性向上のために導火線の口を開いた玉をその上に置く
(3)なんらかの手段(人が直接火種を放り込む/他の導火線/電気雷管)で、打上火薬に点火する
(4)打上火薬の膨張圧力により花火玉が上昇する瞬間に、玉の導火線に二次的に同時点火される
(5)玉につけられた導火線の延時時間満了時に、玉の中心にある割火薬に点火される
(6)割火薬による玉内の圧力上昇、と同時に星に点火される
(7)玉皮が破裂して、きれいな花火が見える
言葉で書くと、このような手順になります。

(4)の段階で花火玉には、火炎につつまれた状態で相当な圧力がかかることになります。
そのため、導火線とパイプとの間に、ほんの僅かでも隙間があると、筒内で開発してしまいます。


花火玉の導火線は、一番内側の玉皮に最初から確実に固定し、なおかつ玉のサイズにもよりますが、その上に短冊状のクラフト紙を10枚(3号玉)~50枚(尺玉)位貼り重ねています。

それも3~4枚(層)貼る毎に完全乾燥させ、その度に導火線周りの隙間を完全に塞ぐことを確実に行います。

また一般的には、不用意な着火を防ぐために花火玉の導火線(火薬部分)は紙で塞いだ状態が製品としての完成・保存状態です。

使用(準備)段階で初めてその紙を切り、かつ先に書いたように着火性向上のために導火線を開く(または着火用の導火線装着する/着火用火薬を付着する)ことになります。

 
 
花火のコメントは最期、と言いつつまた書いてしまいました。(^^ゞ
m(_ _)m

元花火師 2007/07/27 08:36

「小数点」の件は、新幹線ではなく、「緑の窓口」発券システムだったかもしれません。

yohei 2007/07/28 01:51

元花火師さん、たびたび貴重な情報をいただきましてありがとうございます。
「導火線を紙で封じて保存する」ことや「導火線を後付けする」方法は既に考案されているのですね。知りませんでした。花火は工事用火薬などと違って極端な言い方をすれば「無くても困らない火薬」です。娯楽のために危険を冒す以上は徹底的にリスク対策をせねばならず、その責任も重大であることと思います。その緊張感が安全に貢献するのでしょうね。
話は変わりますが、半分ずつ作った花火玉を「パカッ」と合わせて玉にするのは難しいと聞きました。システムの世界でもバラバラに作ったものを結合する部分では泣くことが多いです……。

元花火師 2007/07/31 20:34

 RESいだだけるので、なんだか調子に乗って長居をし過ぎてしまったようです。
本当に、これで最期の書き込みにいたします。


 導火線後付けの花火は、人が直接点火する以外にも、地上開花花火、水上(台船上)開花花火など、
打上以外の花火(仕掛け花火としての扱いに入る)では使用されております。

 防爆照明の件は、火薬庫にこだわっていて忘れていましたが、作業工室にもついていました。
私の居た花火屋では、オンオフのスイッチは工室の外にありました。

 あと、暖房ですが、直接の火気は厳禁なので、間接的暖房(スチーム、温風、などなど)が採用され

ています。
 
 

 各種業界とも、それぞれの歴史なり経験に基づいて、安全対策やリスク管理をしていることでしょう。

問題なのは、業界業種としての基準/目標/理想と、現実の運用がどれだけ近づけられるか、にかかっていますよね。

安全対策には、直接的には利益を生まない、一見して無駄に思えてしまうコストがかかりますから。


 実際の運用面では、どこの業界においても、多少の掟破りは発生しています。
これは、仕事を離れた日常の生活でも同様ですが。

そこで事故が発生するかしないかは、掟を破る人(または破らせる人)が、その掟を破る際に、
 「常に危機意識を持ち続けているか」
 「考えられうるリスクを、どの程度まで深く考慮しているか」
 「世間一般的な常識、倫理感を持っているか」
  ・・・
にかかってしまうと思います。

好景気の時代が終わり、
 「作業の外注化・細分化、などにより、全体を見渡せる立場の人が減ってきている」
 「どこでもコストの圧縮が求められ、一個人にかかる負荷が増大してきている」
  ・・・
という時代の変化も、忘れることの出来ない大きな要因ですよね。


 花火の仕事を離れ、現在は全く別な製造業に従事しておりますが、「事故、不良は無くてあたりまえ」「限られた時間」の中で、「どこまでやるか」に悩みながら仕事をしております。 


 最近のニュースを見ていると、連日のように事件事故の報道が飛び込んで来ます。

 そのほどんどが、「この危機意識の無さ」「一般常識・モラルの欠如」に起因しているように感じております。

 あと、社会の成熟により、あまりにも「安全で当たり前」の世の中になってしまったことも、各個人が身に付けるべき「危険を予知・回避する能力」を奪ってしまっているようで、「安全便利は人間にとって本当に良いことなのかな?」とも思い続けております。


 なんか、脇道にそれてしまいましたが、(多分)読んでいただきありあがとうございました。
また、暫くのお付き合い、本当にありがとうございました。
陽平さんの今後のご活躍をお祈りいたします。


(P.S.)
 半分づつ玉詰めした花火を、パックリ合わせる手法ですが、職に就いた頃は大の苦手でした。

 緊張に弱い私は3号玉(直径9cm)でも手が震え、毎回のように数粒の星がぶっ飛んでおりました。
また、悪い先輩が横からプレッシャーをかけるものだから、余計にです。

 10号玉(尺玉・直径30cm)でも、コストを抑えた玉を作る場合には、この方法を用います。


 少し前になりますが、NHK「仕事の流儀」で、野村花火の社長が「五重芯花火」の玉詰めをしている場面が放映されておりました。

 あの画面(玉詰めの様子)を見るとこの手法ということになりますが、1mmの位置にこだわる花火にこの手法を用いることはありえないことです。

yohei 2007/07/31 23:05

元花火師さんの豊富な知識をインタビューしていると独立した1つのブログが立ち上げられそうですね(笑)。プロジェクトXのように何事かに熱心に取り組まれた方の経験談は聞いていてとてもおもしろく感じます。こちらこそ元花火師さんのご好意に甘えてエントリと関係ないことまで質問してしまいました。
私のブログはSEのつぶやきですので、万人受けする内容にするのは難しいかもしれません。それでも何人かの方に『おもしろいね』と言ってもらえるものを書けるよう、まずは日常の仕事で自分を磨きたいと思います。よろしければこれからも覗きにきてください。


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山口 陽平

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