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スマートデバイス導入プロ集団のイシン社長です。仕事に関係ない話題も多いです。

たしかに「日本人の9割に英語はいらない」と思う

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昨年出版された本で、元マイクロソフト日本法人の社長、成毛眞さんが書かれた日本人の9割に英語はいらない という本を読みました。刺激的なのはタイトルだけでなく、中身もです。ご自身も本書の中で「挑発的な言葉が続く」と書いておられますが、かなり挑発的です。(笑)
 
英語というものを勉強することに意味が無い、英語を学んでどこで使うのか、といった内容が続々と登場します。また、社内公用語を英語にすることに対する反論、英語が必要になったら、その時に初めて勉強すればいい、といったことが書かれています。
 
僕が若いころ、それこそ中学生や高校生の頃、すでに「これからは英語を話せないといけない」とまことしやかに言われていました。「君が社会人になるころには、英語を話せないとやっていけない」と言う大人もたくさんいました。しかし、それから30年以上経っても、ご存知のとおり、話せなくて困る人は少ないわけです。(笑)
 
また、TOEICやTOEFLについても言及されています。僕自身、自分の英語がTOEICで測るとどれくらいなのか知りたくて、あえて勉強せずに受験したことがあります。2000年の10月だったと思いますが670点。翌年に米国で890点の人の通訳をすることになるとは思いませんでした。たしかにTOEICでは、スピーキングというテストはありませんから、話せるとは限らないのですよね。
 
本書にあえて反論があるとするなら、ごくごく一部には英語が話せるということ以外に大した能力がなくても外資系企業でそこそこのポジションにいる人がいる、という事実です。これをみんなが目指しても、ある意味で特例措置なので無理ですが、たしかにそういう人もいるのですよね。ただし、これはマネジメント層の入れ替えなどで、いつ何時崩壊するか分からないポジションではありますが。
 
成毛さんは、英語を勉強する時間があるのなら、もっと本を読んで教養を身につけることを勧めておられます。たしかに、教養を身につけるということは、意外と学生時代にできていないことが多いようですね。であれば、社会人になってからでも、教養を身につける時間を作ってもいいと思います。それは、歴史でもいいでしょうし、もっと違う分野でもいいかも知れません。
 
僕は学生時代に、歴史とか社会なんかは社会人になって役立たない無駄な学問だと思って軽視してきました。で、社会人になって勤めたのは旅行会社。ぜ~んぶ必要だったんですね。旅行関連だけでなくても、日本の歴史はビジネスの場面でもいろいろと喩えに使われることがあります。戦国武将のこと、江戸時代のこと、いろいろと出てくるので結局社会人になってから勉強してきました。、ま、これも必要に迫られて、ということでしょうか。
 
成毛さんは、それでも英語を必要とする、あるいは学びたい人に対して、英語はセンテンスで覚えることを勧めておられます。たしかに、センテンスで覚えるほうが有効ですね。通訳になるのでないのなら、ニュアンスで感じ取ることのほうが大事ですし。
 

僕自身は、結構映画で覚えました。今ですと、DVDを借りてきて字幕を消せば英語だけで見ることができます。字幕を消すだけで結構知っている単語があることに気付くはずです。また、同じ映画の中で繰り返し出てくるセリフがあることにも気付くかも知れません。ハリウッドの映画には、セリフを繰り返してオチにするものがいくつかありますね。
 
少し古いものですと、インディー・ジョーンズのどの作品だったか忘れましたが、登場人物が何度も「quite nice.」と言います。割といいとか、結構いい、という意味ですね。しかし、とっても嬉しそうに言う場面もあれば、しかめっ面で「quite nice.」と言う場面もあります。右手を「まぁまぁだね」といったふうに動かしながら「quite nice.」と言う場面もあるのですね。つまり、同じ「quite nice.」でも、全て意味が違うんですよね。こういう面白さってあると思います。

この本のタイトルを見ると、時代に逆行している、と感じる方がいらっしゃるかも知れません。あるいは、安心を覚える方がいらっしゃるかも知れません。僕は、実はその どちらでもないように感じました。カンタンに言うと、「今の自分に必要なことはなのか?」「時間を使うなら、本当に大切なことに使おう」、そして「どうせ 英語を学ぶのなら、有効な学び方をしよう」というメッセージなんですね。
英語を学ぶということと、国際感覚を身につけるというのは、まったく別のお話です。もちろん、英語から感じる感性というのもありますが、いわゆる座学で学べるものではない、ということだと思います。また、英語を学んでも、精神的に外国人と議論できないというのではねえ、ということなのでしょう。
 
最後に、本書の中で、東日本大震災以降に脚光を浴びた、京都大学原子炉実験所の小出裕章助教が、講演でガンジーの慰霊碑に刻んである「7つの社会的大罪」について書かれていたので引用しておきます。
 
原則なき政治
道徳なき商業
労働なき富
人格なき学識(教育)
人間性なき科学
良心なき快楽
献身なき信仰

僕自身も、これからの人生の中でこれらを抱え込まないように意識しなくては、と考えた一冊でした。

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