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サービス化時代の潮流、ビジネスモデルを探る。週末はクワッチ三昧!

サービス化の進展 〜サービス業の進化 クリーニング店からシティークローゼットへ 〜

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 クリーニングというとワイシャツ一枚いくら?というモノの発想が生活者の視点ではないでしょうか?発想の転換を図り、街のクローゼットとして”衣類に関するコトづくり”としてビジネスを海外にも拡げているのが東京・足立区に本部を置く喜久屋(きくや)です。

 単なるクリーニングでは、薄利多売の世界。最近は、クリーニング業界は市場規模の縮小が進んでいるが、喜久屋では、リフォーム事業やお預かりサービス事業など、サービスの多角化や細分化を進め、ビジネスの拡大を進めています。

 コンセプトは、衣類についての街のコンシェルジュ。クリーニングだけでなく、衣類のリフォームやお預かりサービスを実施している。さらに驚きはサービス業を製造業的にマネジメントする発想で効率化、平準化を徹底している。

  • ”City Closet”の発想
 シティークローゼットの店頭にはクリーニングの文字はない。まさにこの場所が"シティークローゼット(街のクローゼット)" でサービス提供の“場”となっている。
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 衣類の無料保管サービスは、ダウンジャケットを春に預けて秋に受け取るイメージで始めた無料サービス。最近では、ブーツでもお預かりサービスを始めたらしい。専用のセンターで温度や湿度管理、防虫が徹底され、家庭で保管するよりも良い環境で預かってもらえる。
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  • サービスに製造業のノウハウを導入
 クリーニング業の悩みは店舗の衣類保管スペース。喜久屋では、お客様納期の平準化により、店頭在庫が激減した。お客様は、必ずしも翌日受け取りを希望しているのではなく、場合によってはクーポンなどによって閑散日に誘導する事も可能となる。
 お客様との接点となるシティークローゼットの店頭では、クリーニングを受け付ける際に、お店側の都合で納期を回答するのではなく、お客様の希望を聞くスタイルに切り替えたところ、結果として事業者側にとっても都合の良い結果(納期の平準化)につながったという。納期別に並んだランドリー袋にはそれぞれにいわゆるトヨタ生産方式における"カンバン"がついている。
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  • 店頭受付も多能工化
 クリーニングに次ぐ二つ目の事業の柱が、衣類のお直しのリフォーム。店頭にはリフォームをイメージするカラフルな糸車が並んでいる。
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 シティークローゼットの店頭では、常に接客する女性が一人のみ。彼女達がリフォームの採寸やニーズの聞き取りも実施する。ある意味多能工化が進んでいる。
  • 新たなサービスでサービスエリアを全国にも拡大
 「e-closet」は、全国からインターネットでクリーニングの申し込みを受け付け、衣料を自宅で集荷し、無料で保管する2003年から開始したクリーニングサービス。繁忙期の半分程度だったオフシーズンの工場稼働率がほぼ100%と業務が平準化され、その顧客エリアは全国47都道府県に拡大したという。
《e-closetのサービス構成》
 ー〈春季〉イークローゼット
 ー〈秋季〉イークローゼット
 ー〈ふとん〉イークローゼット
 ー〈きもの〉イークローゼット
 2004年にはWebと電話で夜間集配サービスを行う「ムーンライトデリバリー23」のサービスを首都圏で開始しており、2006年には在宅時間の短い働く女性や単身者のより一層の便宜を図るため、携帯サイトでの受注もスタートしている。
 また、シティークローゼットの店頭では、提携する会社と様々なサービスを紹介している。写真は、家事代行やハウスクリーニングを展開するBears(ベアーズ)のチラシ。
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  • FCS(フロント コンシェルジュ サポート)
 2007年末よりFCS(Front Concierge Suport)の名称で、マンション管理やフロントサービスを業務とする企業向けにクリーニングサービスの提供を開始しています。
 首都圏中心の喜久屋が、全国規模でFCSサービスを提供ができるのは、同業他社との幅広い交友関係に加え、 全国のクリーニング業者が加盟するFCS事業のための全国組織があるから(2013年現在、40社超)。加盟各社は料金や受付・管理システムなど会の定めた標準仕様を励行し、会より割振られた近隣地域のマンションにクリーニングサービスを提供している。
  • フリーの工場見学
 喜久屋では、これまで様々な業界や団体からの見学申し入れに対し快く対応して来たという。なぜ、企業秘密とも言える内部の見学を受け入れて来たのかというとそれには3つの理由があるという。
 1. 技術及び管理システム等の情報を開示することにより社会に貢献できる
 2. 「見せる」ことにより「今よりも更に」と云う意識が社内に芽生える
 3.モノやコトの本質である「経営理念」は模倣出来ない
「見学フリー」を通じて喜久屋が学んだことは、「見学者の方々から生活者が抱えるクリーニングに対する本当の不満や不安を聞くことができた」 と云うこと。見学そのものの動機及び目的は社会貢献ですが、結果としては「喜久屋自体の様々なレベルアップ」に繋がっているという。なんとも太っ腹な話ではないですか!
《工場見学の主な内容(約1時間)》
 1. 店舗の受付からの流れ説明(平準化生産との関連について)
 2. 工場ワイシャツ加工ラインの説明(トヨタ生産方式)
 3. 工場ドライ品加工ラインの説明(トヨタ生産方式)
 4. 物流システムの説明
 5. 洋服リフォーム・リペアラインの説明
 6. 質疑応答
  • 今後の展開
 グローバル展開として今年からタイのクリーニング会社と組み、3ヵ年で数十店の規模を目指すという。タイでは、ユニクロなど日本のファッションの浸透が上流階級だけではなく、一般に広がっている。常夏の国のイメージが強いが、ダウンジャケットなども販売されている。
 展開にあたって、日本での使い古されたシステム、方法ではなく最先端の仕掛け仕組みで勝負するとのこと。日本全国に広げるのではなく、海外に展開するところがとてもユニークだと思う。これからも喜久屋のサービス拡大に眼が離せない。
(つづく)
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