オルタナティブ・ブログ > IT雑貨屋、日々のつづり >

IT業界につとめる「雑貨屋(なんでも屋)」が、業界の事、情報セキュリティの事、趣味や日々雑感を綴っていきます。お暇な方はおつきあい下さい。

給料アップの話題を聞いて思った事

»

 佐藤@IT雑貨屋です。

 大変遅ればせながら、あけましておめでとうございます。
 本年は少しずつでも記事の更新が出来る様に務めていきたいと思いますので、よろしくお願いします。

 年明けの4日。年頭記者会見で岸田総理は「インフレ率を超える賃上げの実現をお願いしたい」「この30年間、企業収益が伸びても期待されたほどに賃金は伸びず、想定されたトグルダウンは起きなかった。私はこの問題に終止符を打ち、賃金が毎年延びる構造を作ります」という事を述べました。

 この年頭記者会見を観ていて私が思った事なのですが、単に大企業経営者に「お願い」するだけで賃上げが実現するなら、日本の景気はこれほど深刻な問題を抱えていないと思うのです。
 今の日本の景気低迷は、その原因が政治に責任があると言われている中で、その政治の責任者でもある総理大臣という立場の人間が、単なる「お願い」しか出来ないという処に、私は今の日本が直面している景気低迷の問題の根の深さを感じてしまいました。

 そんな中、11日のニュースでは以下の事が話題になりました。

「ユニクロ」給料アップ 最大40%...初任給でも30万円 賃上げ加速「日本の賃金安すぎる」

 ユニクロでは最大40%、初任給でも30万円 3月から賃上げを加速すると報道していました。これを見た時、日本を代表する企業であるユニクロのファーストリテーリングは、率先してこの岸田総理の「お願い」に対して舵を切ったんだなと感じました。

 ただこの判断が、これまでの日本企業の持っている、自社の社員に対する考え方を、より変化させていく事を後押しする事にもなるのではないでしょうか。だから単純にこの報道を「収入がこれから上がる良い事」という様に、私は単純に捉える事が出来ないのです。

 「日本は世界で一番成功した社会主義国だ」

 確か以前にこの様な言葉があったと思います。
 この根っこにはナショナル(現パナソニック)の創業者、松下幸之助氏の経営哲学にあった「社員は家族」というものがあり、それによる終身雇用制度があったと思います。これは会社とは社員の生活を安定させる為の雇用の場であり、つまり企業とは社会的な公器であるというものでした。

 企業の目的は、利益を追求し、そこで得た利益をステークホルダー(利害関係者)に還元する組織と言われています。このステークホルダーには当然「従業員」も入っていますが、今世紀に入り「市場原理主義」という考え方が浸透する中で、企業の中では人件費すら「経費(損金)」として計上されている様な状況です。

 企業では様々な人が仕事を得て働いていますが、実際に企業の売上向上(利益)に全ての社員が貢献出来ている訳ではなく、いわゆる「フリーライダー」という言葉にも言われている様に、企業の組織にぶら下がり、売上への貢献度が低い社員でも、仕事の場を持ち生活費を得ている人が居るというのは、どこの企業に於いてもある事です。

 今までの日本企業では、そういう人も「社員は家族」という考え方で、生活出来るだけの収入を保障してきました。

 しかし今世紀に入り、日本国内に於いても「グローバル化」という言葉で表わされる様に、「市場原理主義」が導入され、そこからこの「社員は家族」という様な、従来からの終身雇用制度は壊されて来ました。昨今でも大企業の中では「役職定年制」「前倒し退職の推進」などが積極的に行われている事から、この終身雇用制度が、実際には有名無実化が進んでいる事が解ると思います。

 恐らく、ユニクロの提示した「賃上げ加速」という裏には、このフリーライダーとも言うべき企業の売上向上に貢献しない(出来ない)社員に対する賃金カットというのはペアリングで存在するでしょうし、そうなると収入についても「能力給」という言葉による「二極化」が、これからの社会の中では、より顕在化していくのではないでしょうか。

 そんな事を感じてしまいました。

 今までは「正社員になれば雇用は安定して生活は出来る」と安易に考えている人が居たかもしれませんが、これからの社会では、例え「正社員」になっていたとしても、企業の求める能力を発揮できなければ、生活を維持するだけの収入が得られるとは限らない世の中が来るのかもしれません。いや、もう既に来ているのですが、そういう事がより社会の中で顕在化していく時代となるのかもしれませんね。

 五十代半ばを過ぎた、ITエンジニアのボヤキの様な内容ですが、ここまで読んで頂きありがとうございます。

 これからもIT雑貨屋を、よろしくお願いします。

Comment(0)