オルタナティブ・ブログ > Alternative 笑門来福 >

ソフトウェアは私たちに幸福をもたらすことができるのか

IPO激減時代に投資を受けられる人、受けられない人

»

 VCの出し渋り(?)は日増しに強まっているようです。一昨日のエントリ「IPO激減時代のVC投資とベンチャー経営」に呼応して、ある知人の経営するベンチャー企業で、3ヶ月ほど前に出資がほぼ決まっていたものが先月になって出資がキャンセルになったという連絡を受けました。一方で、VCに金が無くなった訳でもなく、最近でも「平野さん、いい出資先ないですか?」といった話をVCの方からいただきます。「どんな企業がいいんですか?」と尋ねると、「できれば黒字化していて・・・」という返事。それじゃあ、VCの意味ないじゃないですか!?融資と同じような判断基準では、VCの存在意義を自己否定するようなものです。

 特に技術系ベンチャーの場合、出資側に技術を見極める「目利き」ができる人がいないために、ある程度良い数字が出てないと判断できないというのです。米国シリコンバレーなどでは、元々エンジニアだった人が、起業し、成功して、投資側に回るということも多く、それぞれのスタートアップに対して早い時点で独自の評価をできるVCが多く存在しますが、日本では、エンジニア上がりのベンチャーキャピタリストはほとんどいません。

 ベンチャー企業がVCに出資を依頼するにあたって、そのビジネスモデルや、成長性や、わかりやすさなどをプレゼンテーションし、その内容や巧拙によって結果が左右されるということで事業計画の支援などのビジネスも存在しますが、実は、特に技術系の場合は、出会うキャピタリストによっても出資の可否は大きく違うということを認識しておかなければなりません。

 そのためには、(1)VCの名前(ブランド)だけに依るのではなく、得意分野を持ったブティック型のVCのキャピタリストと直接話をする、(2)そのために、投資家系のネットワーク作りを大切にする、(3)そしてVCの選別眼を養うといったことが、このIPO激減時代に出資を得るためには必要になってきていると感じます。上記(3)をあえて入れておいたのは、メジャー系から外れて出資を乞う場合、中には素性の良くない投資話というのも紛れる危険性が高くなるからです。こんな時代にVCの選別も無いだろうと思われるかもしれませんが、資本政策は後戻りができないので、極めて重要です。

 じゃあ、具体的にどんなところがあるんだということも言われそうなので、一つだけ例を挙げると、日本ソフトウェア投資の酒井裕司さんという人がいます。この人は、技術評価がお寒い国内VC状況の中で、私がソフトウェアの技術評価で大変信頼を置いているキャピタリストです。インフォテリアの投資判断にも入ってもらっています。彼は、元々はソフトウェアエンジニアで、その後、ジャフコ(国内最大のVC、野村證券系)で米国投資を経験し、次にイグナイトで、アッカネットワークスなどの大型案件を手がけ、最近、日本ソフトウェア投資として独立しました。

 別に酒井さんを売り込みたくて書いてる訳ではありませんが(笑)、彼のように、しっかりとした技術バックグラウンドを持って投資判断をしている人が国内に全く存在しない訳でもなく、ベンチャー企業、特に技術系ベンチャーにおいては、出会うキャピタリストによって大きく評価が異なることがあるということをあらためて強調しておきます。

 ちなみに、先日ご紹介した「IPO激減時代のVC投資とベンチャー経営」の講義で、村口さんの講演のあとに村口さんと酒井さんでパネルディスカッションを行ってもらうことになりました。かなり毛色の違う2人の現役キャピタリストが金融危機後のVCとベンチャー経営の景色について意見を戦わすことになり、私も楽しみです(笑)。村口さんの講演が16:20〜17:50(90分)、その後、18:00〜19:30(90分)でパネルディスカッションと質疑応答を行いますので、参加をご希望の方は、こちらのエントリを参照してください。

Comment(0)