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ソフトウェアは私たちに幸福をもたらすことができるのか

 前のエントリ、「国産ソフトコンソーシアムの成功に必要なことは?」でソフトウェアの輸出入のことを書きましたが、輸出入の実態はどうでしょうか?

 私の知る限り、ソフトウェアの輸出入に関する最新の調査はJISA※注1による「2005年コンピュータソフト分野における海外取引および外国人就労等に関する実態調査」で、2004年度の調査結果が公表されています。

 これによると、2004年度のソフトウェアの輸出入額は以下のようになっています。

(単位:百万円) ベーシックソフト※注2 アプリケーションソフト※注3 カスタムソフト※注4 合計
輸出 448 26,397 6,146 31,990
輸入 142,935 193,531 28,117 364,583

 この数字でみると輸入は輸出の11倍強※注5です。しかし、ソフトウェアの輸出入を語るときに、毎年行われているJISAのこの調査ではなく、いまだに2002年7月に発表されたJEITA※注6の「ソフトウェア輸出入統計調査 2000年実績」を引き合いに出されるケースも少なくありません。その調査によると、上記の数字は以下の通りとなります。

(単位:百万円) ベーシックソフト※注2 アプリケーションソフト※注3 カスタムソフト※注4 合計
輸出 3,445 5,177 359 8,981
輸入 347,369 297,514 273,977 918,860

 ずいぶんと差があるのがわかります。こちらでは、輸入は輸出の102倍※注7となっています。残念ながら、JEITAの調査はこの年が最後となっているので同じ年の数値で比べられないのですが、なぜ、ここまで数字が違うのでしょうか?それは、JEITAの調査は、JISA、JPSA※注8、JEITAの3つの協会が協力して全体の動向を把握する目的で実施したのに対し、JISAの調査は単に953社中318社(うち輸出入に関しては74社)の会員アンケート調査の合計で、しかも外資系ソフトウェアベンダーはほとんど参加せず(2004年調査での参加は1社)に行われているからだと考えられます。企業カテゴリ毎の参加社数は以下となっています。ちなみに、JISAは国内のシステムインテグレータを中心とした業界団体で、JPSAは国内のプロダクトベンダーを中心とした業界団体です。

独立系 メーカ系 ユーザ系 外資系 コンピュータ
メーカ
合計
41社 15社 10社 1社 7社 74社

 実際、ソフトウェアの輸出入格差を問題視される場合に挙げられるのは、オフショア開発分の輸入ではなく外資系ベンダーのプロダクト輸入です。例えば、先月発表された日本オラクルの決算では、ランセンス販売が44,355百万円もあり、1社だけでJISA調査の1割を超える数字となっています。

 このように、JISAで毎年出していただいている輸出入のデータは、残念ながらソフトウェアの輸出入の全体を把握するためにそのまま使うことはできません。そのために、いまだにJEITAの数値を引き合いに出す場合があるのです。

 日本のソフトウェアが世界的に価値を提供できているかどうかを知るためには、その経過、成果が測定ができる仕組みが必要で、そのためには業界において全体的な輸出入統計への取り組みがなされるとよいと考えています。

注1: JISA = (社)情報サービス産業協会 Japan Information Technology Services Industry Association
注2: ベーシックソフト = 不特定多数のユーザを対象として開発されたソフトであり、言語プログラム、ライブラリ、ミドルウェア等を含む。
注3: アプリケーションソフト = 不特定のユーザを対象として開発された業務業種ソフト。
注4: カスタムソフト = 特定ユーザからの発注により開発されたオーダーメイドのソフト。特定ユーザが自社であってもよい。
注5: JISA調査数値による輸出入比率の経年変化は次の通り。2001年約27倍、2002年約32倍、2003年約31倍、2004年11倍。2004年に急に差が縮まったと読むことも可能だが、調査報告に内容の記述はなく、アンケートの回答社の変化によって生じた変化と考えられる。
注6: JEITA = (社)電子情報技術産業協会 Japan Electronic and Information Technology Industries Association
注7: 但し、JISAの数値は、2001年9,263百万円、2002年9,315百万円、2003年9,213百万円で2004年に急に31,990百万円と大きく伸びているので、2000年における輸出の数値は、JISAとJEITAで大差ないものと考えられる。
注8: JPSA = (社)日本パーソナルコンピュータソフトウェア協会 Japan Personal Computer Software Association
平野洋一郎

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コメント
貧乏神 2006/08/07 01:12

統計なんぞ不要だと思うなあ。
技術レベルが米国より10-30年遅れてる現状で勝てるわけがない。たとえ統計上勝っているように見えたって意味がない。
どれほど帳簿の上の数字を弄くり回して誤魔化そうとしても、実際がどうであるかは現場にいる技術者が一番良く分知っているんですよ。

平野洋一郎 2006/08/07 01:35

貧乏神さん、コメントありがとうございます。
確かに統計上の数値を弄くり回しても意味はありません。ちなみに、私の言わんとしていることは「JISAの数値よりも実際はもっと差があるだろう」ということです。また、OSSやサービス化が進展しソフトウェア開発がボーダーレス化するなかでは、このような数値で全体を把握できないどころか、意味があるかどうかという議論すらあるでしょう。ただ、逆に数字は一人歩きしますからJISAの調査のような中途半端なものだけが存在するのも問題だと考えるわけです。
ちなみにソフトウェアの技術レベルで言えば、私は10年~30年遅れているとは思いません。現に、Rubyのまつもとゆきひろさんや、SoftEtherの登大遊さんなど世界的に認められているソフトウェアエンジニアもいます。業界構造は10年~30年遅れているかもしれませんが(笑)。

ゆきち 2006/08/07 02:57

技術レベルは遅れてないですよ。
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/NEWS/20060522/238575/
でもご覧ください。先端は、十分世界レベル。ただ、その後ろが酷く長いだけ。


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インフォテリア代表取締役社長/CEO。主力製品ASTERIAでシステム開発の新たな形を提案するとともに、OnSheetやHandbookなど新たな分野のソフトウェアに挑戦する。

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