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ソフトウェアは私たちに幸福をもたらすことができるのか

SI業界は建設業界に似ているというのは本当か?

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「実際のところ、建設業界と似たようなもんですから。」

 ソフトウェア業界、とくにSI(ITサービス)業界で自嘲気味に語られることの多い台詞です。ゼネコンを頂点とする多重下請け構造や、労働集約型の現場を指して言うようですが、本当にそうなのでしょうか?私もこの業界長いですが、実際に建築業界に身をおいていた人が語ったのは聞いたことがありませんでした。そして、昨日まさに建設業界から見た双方の業界の比較について聞く機会があり、双方の違いと問題点を鋭く斬られていたので、他のメディア主催のセミナーの話で恐縮ですが紹介させてもらいます。

 その話とは、日経ソリューションビジネスDAYの基調講演で大成建設CIO(社長室情報企画部長)の木内里美氏のお話。大成建設ではASTERIAもご利用いただいており、木内氏とも面識があるのですが、こういう切り口のお話を聞くのは初めてでした。講演の中で氏は、受託開発と建設業が似ている部分だけでなく異なっている部分も具体的に指摘されました。そして、それらは我々の業界が真剣に取り組まないといけないことへの直言でもあります。以下、氏のプレゼンテーションから引用です。

受託開発における建設業との比較

<似ていること>

(1)労働集約型産業である

  • 請負型で労働集約型産業構造はそっくり
  • しかし、建設業は建設業法で規制される許認可事業であることが違う

(2)多重階層型労務形態である

  • 多重化された下請けによって事業が成り立っていることは同じ
  • 建設業は官民事業を問わず、施工体制台帳の作成を義務付け

(3)市場がほぼ国内で、グローバルな競争をしていない

  • ITサービス業界は完全輸入超過
  • 建設業も全体で見れば海外事業は2%程度
  • 参入障壁(商習慣、日本語環境)に守られた市場でのビジネス

(4)プロジェクトマネジメントが必要である

  • 工期遵守の精神はかなり異なるように感じる

(C) 2005 TAISEI Corporation

似ていることを示しながらも、似て非なること(青字)もズバッと指摘されています(笑)。

受託開発における建設業との比較

<建設業界から見た異質なこと>

(1)労働単価が曖昧

  • PG、SEの経費込む単一単価をベンダー毎に示すのみ
  • 建設業は基準労務単価があり、積算の元になる。

(2)積算基準がない

  • 歩掛かりや標準積算の考えがない
  • 積算基準も持っていない

(3)出来高管理をしていない

  • 下請企業に対して完成払いが標準
  • 出来高管理型の労務管理や外注管理をしていない

(4)工期遵守意識が希薄

  • 工期の遅れ=ペナルティの意識がない

(C) 2005 TAISEI Corporation

 このように建設業の立場から整理されると、自嘲気味に「似ている」というのがかなりおこがましいという気になります。他にも、ユーザー側からみたITサービス業界への直言が多くあり、多くの業界人に是非聞いて欲しいと感じた講演でした。

(日経ソリューションプロバイダの回し者ではありません(笑))

[2005/11/10 追記]

木内氏からのご連絡で木内氏もブロガーであったことを知りました。「土木ITサミット」内のブログで建築関係の技術者を対象としたサイトですが、ご興味のある方はこちらへどうぞ。

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