Photo 本日は自主ゼミの企画で練馬区立美術館に「あしたのジョー、の時代展」を鑑賞に。しかし、案の定学生は二人しかきていなかった。

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 この展示は『あしたのジョー』の原画展示によるストーリー解説と、同時代の諸現象を組み合わせて構成されている。原画、セル、アニメグッズや丹下拳闘クラブの模型などと、雑誌、フォークソングブーム、TVCM、当時の新宿の写真やスケッチ、力石葬儀と寺山修司及び「天井桟敷」、アングラ演劇やパフォーマンス、そのポスターなど、時代状況を感じさせる展示で観せる。軸になっているのは「肉体の復権」的な時代の流れと三島自刃や土方巽などをからませた視点。

Standa_up_joe http://www.city.nerima.tokyo.jp/manabu/bunka/museum/tenrankai/joe2014.html
 はじめ学生がいなかったので、一人でじっくり観ていた。あとで学生が二人来たので、「あ、これ多分新宿南口のとこ」とか「この店よくいった」とか、思い出話をしながら2時間以上丹念に展示を観てしまった。自分でいうのも何だが、当時をリアルタイムで感じていた人間の証言つきで観られるチャンスだったのに、おおむね学生はこういうのに興味をもたないものなのだ。まあ、無理もないが、歴史に興味をもつ人が少ないのかなあ。

学生にはいささか迷惑だったかもしれないが、僕個人は楽しかった。





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Photo 出ました! 「アメリカン・コミック・ストリップの最初にして最高の傑作」ウィンザー・マッケイ『夢の国のリトル・ニモ』「完全収録」の『1905-1914リトル・ニモ』448ページ!(小野耕世・訳、解説 小学館集英社プロダクション) すごい! まだ読み始めたばかりだけど、素晴らしい! もともと新聞日曜多色版の大型紙面なので、縮小してはいるが、これが単行本としてはぎりぎりの大きさだろう。小学館集英社プロダクションの快挙である。これで6000円は、はっきりいって安い! 色彩もいいし、読みやすい。これまでも翻訳はあったが、これが最高といっていいだろう。いやあ、満喫。ニモのかたき役で登場したフリップといたずら好きのジャングル小僧が最高にかわいい!

Photo_2 見よ、この波の表現の素晴らしさ。

Photo_3 見よ、この象の迫力!

Photo_4 見よ、この色彩構成! 「日本のマンガが世界一」などと無意識に信じ込んでいる人は、20世紀初めの米国で描かれたこのマンガを一度見てほしい。

「ウィンザー・マッケイは、『リトル・ニモ』のなかで、ありとあらゆるコミック・ストリップの技法上の実験を早くもやってしまったのだ。線と色彩、言葉と画面の全体としての新機軸をうちだした。彼は、コミック・ストリップを発見した、というよりほとんど発明したといってもいいだろう。」小野耕世解説・帯

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http://eiga.com/movie/78218/

外すと残念な感じの話だったので、ちょっと迷っていたが、面白かった。温暖化を解決するはずだったある物質の成層圏散布がもたらした氷河期の中で、なぜか唯一生き残ったとされる、永久機関的に世界を1年で回周する列車。そこに生き残りの人類が詰め込まれ、階級分化したまま走っている。最後尾には悲惨な被支配階級がうごめき、彼らの「革命」が発動するという話。
むちゃくちゃ制約のある設定で、小説ならともかく、映画では展開も映像もなかなか難しかろうと思われたが、2時間余、まったく飽きない。よくできている。監督は韓国の人で、これがはじめての英語版らしい。原作はグラフィック・ノベルで原題は「Bitters End」みたいだけども。

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http://www.momat.go.jp/Honkan/core/index.html

http://www.momat.go.jp/Honkan/core/index.html

わけのわからんタイトルだと思ったが、「宝」の意味がみそで、現代美術がどんな条件でどれだけの高値でオークションに出るのか、ふつうの美術展ではまず避けるだろう「お金」の問題を正面から解説したという意味で、非常に面白い展示だった。また美術館とコレクターの違いを、その側面から教えてくれた。

それと、このコレクションは台湾にあって、つまり日本占領下での現代美術を見ることもできる。なかでも、サンユウ(常玉)という人の作品は、とてもよかった。

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Photo_2 ちくま評伝シリーズ〈ポルトレ〉『長谷川町子 「サザエさん」とともに歩んだ人生』(筑摩書房 1200円+税)という高校生向けの本に、巻末エッセイ「世代を超えた『サザエさん』の意味」という文章を書きました。図版含め8ページ。

 表紙の絵、かっこいいでしょ? 何と、なぜか寺田克也!

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http://wwws.warnerbros.co.jp/grudgematch/

ロバート・デ・ニーロとシルベスター・スタローンが、かつてのヘビー級チャンピオン同士。お互いにほぼ無敗、お互いに唯一の一敗が相手からのKOというライバルで、60代でのリベンジを行うというコメディ・テイストの映画。スタローンのトレーナー役のアラン・アーキンが懐かしかった。

まあ、そこそこな映画だが、ボクシングを知ってる人なら、エンドロールが出てからの後日譚には笑うに違いない。あと未公開シーンにもね。

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兎丸焼き! 2014/08/13

Photo_2池袋の「聚福楼」にて、八卦掌仲間全4人で兎丸焼きを頼むと、こんな光景に。「エヴァ」の地下にいた奴みたいな?
何ツーか、直接こいつに出会うと、アドレナリン出て「食事をいただく」というより「戦闘開始」的な「喰らう」衝動に突き動かされる。このテーブルの背後に若干溶鉱炉的な厨房があり、そこでガンガンいろんなものを焼いて、テーブルに持ってくる。が、実際はこの網では丸焼きは無理で、「はい、見せました」的瞬間ののち、ぶつ切りになって出てくる。

Photo_3で、こういう状態。これより網で焼く。主役はあくまで兎のぶつ切り。
ともかく暑い。前屈みに焼いて食べていると頭がぼーっとしてくる。しかし、うまい。身は白くなるまで焼き、脂は少なく、さっぱりしつつも、旨味があり、ひたすらこれだけ一羽分食べ続けたにもかかわらず、飽きない。フランス料理などで食べる兎料理とはまた、まったく異なる味覚。臭みもなく、癖もない。しかし、鶏でも、豚でも、まして羊でもなく、蛙とも違う。結論、おいしかった!

というわけで、たたかいすんで外に出たら、外のほうが涼しかった。
今後の課題としては、やはり羊の足とか、背中とか、ほかのテーブルに運ばれる姿をみると、やはりこれはまた挑戦せねばなるまい、という戦闘意欲をかきたてられた。動員人数がないと討ち死にしそうだが。倍の8人ほど、ほしいなあ。

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Photo『マンガを「見る」という体験 フレーム、キャラクター、モダン・アート』(水声社 2014.7.20刊 2800円+税)を読み始めた。まだようやく半分しか読んでいないのだが、非常に刺激的で面白い。この本は、2013年後半期に早稲田大学戸山キャンパスで三回にわたって行われた「マンガ的視覚体験をめぐってーーフレーム、フィギュール、シュルレアリスムーー」というワークショップでの発表をもとに各発表者によって書き下ろされた論文集である。僕も一度見に行ったのだが、言葉の共有、問題意識の擦り合わせというのは、美術とマンガの間でもなかなかに難しいものだな、という印象をもってしまった。いや、もっと率直にいえば幻惑的な言葉遣いに辟易しさえした。しかし、この本でまとめられた論文を読むと、マンガ表現論が招来するはずだったろう原理的な問題が真摯に語られていて、まことに興奮させられた。

まず鈴木雅雄「瞬間は存在しないーーマンガ的時間への問い」は、マンガを読むことの実感に即しつつ、そこに生起する「時間」の感触をとらえて、じつに興味深く読ませた。マンガの中に「瞬間」を見るのは、じつは動いてしまう「描かれたもの」を、むしろ止めるべく手段を発明せねばならないからだ、という指摘は、「瞬間」としてとらえられがちなマンガのコマをとらえる別の視角をもたらしてくれた。
「コマのなかに、複数の人物や事物、風景が描かれているなら、それぞれはすでにそれ自身の固有の時間を生きている。描かれたものは動いてしまうのであり、だからこそ私たちはその時間に働きかけて、複雑な時間の交錯を生み出すことができるのである。」(同書 p67)
この指摘は、僕の中でもマンガの実感として妥当なように感じられた。レイアー構造として少女マンガ的なコマの様態を見いだした僕の感受も、ある意味ではこの要約に近いものを感じてのことだったと思える。

また、鈴木の発表を受ける形で、野田謙介が書いた「マンガにおけるフレームの複数性と同時性についてーーコマと時間をめぐる試論(一)」は、僕にはさらに刺激的だった。グルンステンの訳者であり、幅広い知見を持つ野田は、すでに海外のマンガ論と日本のそれをめぐる諸問題について見渡そうとする小論をいくつか発表しているが、ここでようやく本格的にそれらを「マンガの時間論」という角度で展開し始めている。その論旨に興味のある人は、不正確な要約を読むより、直接この本を読んでほしいが、一言引用するなら「ひとつのコマは、そのなかに複数の潜在的なコマを、あるいはいくつもの種類の時間を同居させうる舞台のようなものだ」(同書 p96)という問題意識で貫かれる。
日本のマンガ論で「コマ」と呼ばれる領域には、厳密にはフレームだけではなく、様々な水準の「時間のまとまり」が潜在し、それを原理的に言語化していかなければ、われわれの「マンガ」という体験をときほぐせないという問題意識である。切れ味のいい論理展開で、分析用語のもつ抽象性や妥当性、具体性や曖昧さ、その限界を切り分け、グルンステン、マクラウド、日本のマンガ論を縦横に手繰りつつ、「マンガ」と(とりあえず)呼ばれる体験の原理に向かおうとしている。

僕が、まずは具体的に描くことができ、目に見えるものとしてマンガ表現の三要素をあげたとき、「絵」「言葉」と併置して「コマ」と呼んだ領域は、いったん「目に見えない」領域の問題に入った途端、手に負えない複雑な様相を見せるように感じられた。だからこそ、それ以降の原理的な追求を当時やめたのだが、野田はそこに切り込もうとしている。『マンガの読み方』(驚いたことにすでに19年前の共著なのだった!)を書いた頃、ぼんやりと感じていた多くの問題やその領域が、野田の手で形をとっていくような感覚にとらわれた。
これが僕の感想で、だからこそまだ全部読んでいない本について、現在の興奮のままに記しておきたいと思ったのである。野田の小論タイトル末尾にある「(一)」の文字を期待をもって確認しておこう。研究者仲間に(むろん愛情をこめて)「眠れる獅子」的なイメージで語られる野田の、ようやく片目が開いたのかもしれないのだから。

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昨日から「下川凹天 日本近代漫画の系譜」展が始まりました。10月9日までです。

本日10日、佐々木果さん、野田謙介さんと僕でトークショーが行われました。台風の中、25人もの人が集まってくださり、小野耕世さんまでいらしてくださった。いつも数人だという川崎Mのミニホールとしては破格の集客だそうです。もっとも、ほとんど知り合いでしたが。
下川凹天という、なかなか掴みがたい漫画家の魅力を少しなりとも伝えられたらうれしいです。川崎側の担当が途中からうちの卒業生になり、なかなかの活躍をしてくれたようで、これもうれしいかぎりです。トークショーのほうは、僕はこのプロジェクトの現場ではあまり役に立っておらず、ちょっとしたコメントしかできませんでしたが、展示は面白いと思います。まとめて見ていくと、やっぱりこの人は僕の母がたの祖父・三田平凡寺や宮武外骨と同時代の人なんだ、と感じます。漫画家仲間からは「グロ」ともいわれる女性への視線が大変興味深いです。日本の漫画概念が揺れ続けた時代を生き、それを反映している作家といえるかもしれません。

トーク後に、ほとんどの人が移動してスタッフとともに懇親会。これも楽しかったです。マンガ言説史的な話から70年前後のしょうもない昔話まで、奥のほうの喫煙グループで盛り上がってしまい、スタッフの方々などを慰労もできませんでしたが、ご苦労様でした。そして、今後もよろしく。

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以下は、花園大学前期の集中講義レジュメです。今回、初の試みで、短編マンガをその場で読んでもらい、学生たちから意見感想を引き出しながら、作品分析の演習をするという講義にしてみました。
結論からいうと、ゼミで1~2限であればともかく、半日これを続けるのはちょっとしんどかったです。でも、学生たちのレポートを読むと、それなりに分析の可能性を示し、何人かは分析能力の獲得を感じたようです。短編の選択も、あまり昔のものでなければ、もう少しうまくいくかもしれません。学生さんは自分の読みを歴史的に相対化することは普通できないので、わかりやすいものを選んだほうがよかったようです。でも、自分の読みが歴史的に成立したリテラシーであるということを認識できないと作品分析は難しいのも事実ですが。
ちなみに、1限で2作品は、予想通り無理で、結局最後の作品はできませんでした。

2014.7.30 京都・花園大学夏季集中図像学講義 短編マンガを読んで分析してみる 夏目房之介

①読んでみる(10分) ②語ってみる(15分) ③分析してみる(20分) 計45分 1限2作品

つげ義春『李さん一家』p12

やまだ紫『ときどき陽だまりで』p6

逢坂みえこ『夢の秘密基地』p20

久住昌之・原作、谷口ジロー・作画『孤独のグルメ 第12話 東京都板橋区大山町のハンバーグ・ランチ』p9

萩尾望都『半神』p16

とり・みき『Mighty TOPIO』p8

討議~小論文

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プロフィール

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夏目 房之介

72年マンガ家デビュー。現在マンガ・コラムニストとしてマンガ、イラスト、エッセイ、講演、TV番組などで活躍中。

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