夏目房之介の「で?」

吉本浩二『ルーザーズ ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』①双葉社

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吉本浩二『ルーザーズ ~日本初の週刊青年漫画誌の誕生~』①双葉社

『ブラックジャック創作秘話』で、手塚伝説を取材して漫画化した作者が、今度は双葉社の清水文人と「週刊漫画アクション」創刊を描いている。 最初の巻では、1965年当時、まだ「週刊大衆」の版元で、銭湯だった木造二階建ての双葉社が舞台。懐かしき「漫画ストーリー」編集長だった清水文人(のち社長に)を主人公にしている。
戦前からの流れをくむ「漫画集団」系などの「大人漫画」が主流だった時代に(当然「大人漫画が主流だった」となるはずなのだが、なぜか「漫画といえば子供向けの時代」という説明が何度かされる。それ、ちょっとミスリードでは?)、清水が貸本漫画家だった加藤一彦=のちのモンキー・パンチを発見して起用する話。そして最後に登場する、この後姿はご存じ(まあ、業界的には「ご存じ」なのだけど)バロン吉元。1巻では巻末に加藤兄弟のインタビューと年表付き。つことは2巻はバロンさんのインタビューが? 

同じ時代を読者として過ごした者には大変面白く読めるし、勉強にもなる。色々と調べて描かれているのはわかるのだが、こまかく見ていくと、当時はあり得ないゴミ箱があったりする。まあ、ご愛敬というところか。ぜひ滝田ゆうや『三丁目の夕日』を参考にしてもらいたい。

あと、青木雄二的な上下断ち切りコマになっているが、そのおかげで頁ノンブルが一切ない。研究者としては引用の出典表示に困るので、本作にかぎらず、ぜひやめていただきたい。あるいは、ノンブル表示を工夫してください。お願いしまーす!

追伸
書き忘れましたが、ここでのマンガ史的ポイントは、加藤一彦氏(モンキーパンチ)が、古本屋で出会った米国の「MAD」の絵に惹かれ、その影響を受けた絵柄に清水文人が新しいものへの直感を得た、という流れですね。このあと、アメコミそっくりに描けたバロン吉元氏が登場するわけで、「アクション」の「青年劇画」がじつはアメコミ的な風を受けて始まったというところが重要ですね。
でも、このあと小島剛夕の『子連れ狼』(絵物語系の絵)、上村一夫『同棲時代』という大ヒットで記憶されるわけで、アメコミから絵柄的な変化を経験していくわけです。バロンさんも、アメコミそのままから、もう少し情緒的な描き方に変化して『柔侠伝』シリーズでマンガ史に定着していく、ということなのではないかと。
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