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夏目房之介の「で?」

映画『メッセージ』

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 映画『メッセージ』(原題「Arrival」)。レンタルで観た。なかなかに興味深い映画で、ちょっとトリッキーな構成だった。面白いといえるかどうか微妙なところで、映画の娯楽性とかお話の構成という意味では、それほど「面白い」とはいえなかった気が僕はする。そこには、未知の地球外生命に関する想像力の問題もあると思う。

 で、こっからいわゆる「ネタバレ」に近くなるので、それが嫌な人は読まないように(笑

 興味深いのは、テーマが「言語」であるというところ。したがって主人公は言語学者。 で、地球外生物の「言語」と、英語圏の学者のコミュニケーションがお話になっていくんだが、意味の不確定性、翻訳の不可能性というところは、映画内では周囲の人間(とくに軍人)には理解不能という設定。だが、正直その解読過程にはいろいろと疑問符が浮かぶ。
 とはいえ、人は言語によって世界を構成しており、「時間」もまた言語によって構成されている、という理解はある意味我々文系にも親しみがある。そして、地球の人間とはまったく異なる文化だろう宇宙人の「言語」には、我々の「時間」を越えた理解が可能である、という設定が面白い。つまり、彼らの言語を理解することで、地球人の「時間」を超越しうる、というのが映画のミソなんである。 これ以上はかなりはっきりと「ネタバレ」なので書かないが、そのあたりの主題は興味深いのであった。
 しかしながら、この監督、僕があまり感心しなかった『ブレードランナー2049』の人で、やはり同様の(僕の目からみると)映像に淫した長回しの気取り、あるいは勿体ぶった芸術気分が、あるんだよね。要するに、僕はそういうのが嫌いなのだね、と再認識してしまった。逆に言うとこれを好きな人もきっとたくさんいるだろうな、と思いますね。

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