夏目房之介の「で?」

アラビア語版『吾輩は猫である』

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 以前、漱石関係のイベントでご挨拶をいただいたアラビア語版の漱石作品を翻訳されているマーヒル・エルシリピーニーさんから、メールでご連絡をいただきました。
「お陰様で、国際交流基金の翻訳出版プログラムで、先月、『吾輩は猫である(上)』のアラビア語翻訳版を出版させていただきました。
 これから、日本やアラブメディアの取材、サイン会、講演会で忙しくなります。」
 おおー。エルシリピーニーさんは、広島大学特任教授の任期を終え、カイロ大学日本語学科に戻られたそうです。お知らせありがとうございます。表紙デザインはなかなか興味深く、シンプルでいいですね。

 『吾輩は猫である』の英語版は『I am a Cat』ですが、当然そこには「吾輩」「である」の「偉そう」でユーモラスなニュアンスが出ない。日本語には、謙譲語など、クラスやジェンダーで使う語を変えるシステムがあるが、これがないか、薄い言語で翻訳する場合、当然こうしたニュアンスを語レベルで直接反映するのは不可能になる。アラビア語がどうなのかまるきり知らないが、翻訳というのはあくまで文脈的な理解で意味を伝えるものであり、だから物語があるほうが伝えやすい。『猫』はというと、お話は一応あるから訳しやすいのだろうか。う~ん、あの知的共同体の雰囲気の中での悪ふざけ感みたいなのは、案外どんな世界にもありそうだけどねえ。まあ、難しいのは難しいでしょうね。しかし、異文化に届いてくれるのは、ありがたいことです。


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