夏目房之介の「で?」

6月10日小野耕世トーク「横井福次郎と『子供マンガ新聞』」

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「小野耕世、マンガづけの少年時代」展(2017年4月25日~6月24日 東京銀座 若山美術館)で、小野さんのトーク、5月20日「松下井知夫と『週刊少国民』」、6月10日「横井福次郎と『子供マンガ新聞』」がありました。5月のトークは間に合わなかったが、6月のほうに行ってきました。いつものことですが、小野さんの話はあちこちに飛びながら、でも貴重な内容でした。
 「日本の物語マンガは1930年頃から始まった」というところから始まり、横井福次郎の『冒険ターザン』に触れながら、漫画集団系が米国のコミックバッシングに親和的で漫画にもそれが反映していたというお話。アメリカ人であるターザン(本来は英国人)が日本の浮浪児を助けるという構図の横井版ターザンの親米性と、小野さん個人の米兵との挿話(車中でタバコを吸おうとした米兵に学生だった小野さんが注意したら、おとなしくやめた話など)を交えて、当時のアメリカの印象についてや「子供マンガ新聞」の位置について話された。
 また、絵柄や線のことについて、かつて鶴見俊輔氏が「あるレベル以上の技術をもつマンガ家の場合、手が頭を裏切ることがある」と語ったことを紹介し、父上が描かれた戦時中の反米的な絵の中の自由の女神の女性っぽさについて言及された。絵については、田河水泡の絵が平坦に右から左に横にしか動かないといって、手塚と比較する戦後マンガ論があるが、そういう問題ではないという主旨のことを話された。
終了後、僕も手塚論を書いた頃はそのレベルでしたと申し上げたら、「いや、あなたのことをいったんじゃないよ」とはおっしゃってたが、小野さんのいわんとする言説形成に寄与したのは事実だからしかたがない。
 じつは、これまで長い間小野さんとお会いしているが、サインをもらっていないことに、終了後気づいて、初めてサインをいただいた。「あなたにサインするのは恐れ多いなあ」と何度も謙遜されながら、素晴らしいサインをしていただけた。ありがとうございます。宝物です。小野さんは、これまでもこれからもマンガ研究にとって貴重で重要な方で、恐れ多いのはもちろん僕のほうなのである。
 小野さんは何度も「とにかく僕の本を読んでもらえれば、いろいろわかるんです」とおっしゃった。新刊『長編マンガの先駆者たち 田河水泡から手塚治虫まで』(岩波書店)には、大城のぼる、横山隆一、松下井知夫、横井福次郎、宍戸左行、田川紀久夫など、これまで論じられてこなかった作家たちについて書かれている。もはや小野さんしか書けない領域といっていい。じつはまだ読んでいないので、読んだらまたご紹介できればいいなと思っています。
 あ、そういえば今僕が読んでいる四方田犬彦『漫画のすごい思想』(潮出版)を面白いといっておられた。

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