夏目房之介の「で?」

ラスコー展

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上野の「世界遺産 ラスコー展」に行ってきました。昔からラスコーの洞窟画(クロマニョン人が描いた2万年前の氷河期の絵)は、一部が複数の絵で描かれ(写真の馬の首や足など)、アニメーションの元祖でもある、という話があって、ホントカナー的な眉唾気分で聞いてたんですが、この展示をみて納得しました。絵はいずれもけっこう高い場所に描かれ、線刻され彩色されています。当たり前だけど洞窟だからいつも完全な暗黒。絵を描くだけじゃなく、見るためにも獣脂によるランプで照らさないと見えない。すると、あの凹凸のある洞窟のキャンバスは、炎の揺れ、光源の位置変化によって、線刻の影も変化し、複数の線刻は動いてみえる、ということなんですね。なるほど、古代人にとってこの視覚経験はほとんど幻覚的な呪術的なものだったろうと容易に推測できます。壁画のひとつに、巨大なバイソンに突き飛ばされているかのような人間が描かれていて、解説によると「鳥人間」なんだそうですが、つまり鳥の頭を装飾した呪術師であり、洞窟画を描き、利用したのも彼らであった。洞窟自体が聖なる空間であったろうと。なるほど、描かれている動物のほとんどが、巨大で畏怖される神的な動物で、日常的な、たとえば魚とか、貝とか、植物などがほとんど出てこないことからしても、そうかもしれない。などと、いろいろ考える機会を与えられた展示でありました。

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