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夏目房之介の「で?」

水木しげるさん逝去

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http://news.yahoo.co.jp/pickup/6182543
水木さんが逝かれた。
デスクワークしていたら立て続けにマスコミからコメント依頼がきて知った。
貸本時代にはほとんど知らず(「忍法秘話」では見ていたはず)、「ガロ」で作家として認識し、すっとぼけた中に尋常ならざるニヒリズムというか、索漠たる気配の漂う短編群が大好きだった。後年、捕虜生活中に描いた絵の、時間が止まった「死」の気配に、それが戦争体験とつながっているのを知った。いわゆる妖怪は、おそらくその「死」=「異界」からやってくる。そのはざまに立つのが、ねずみ男だったろう。
マンガ論を手塚を軸に始めたとき、手塚を相対化する存在のひとつが梶原一騎とならんで水木さんだったし、とにかく水木マンガのあの世界が好きだった。でも、インタビューでご本人にお会いして、いきなりその人を食った存在にやられ、「水木マンガも面白いけど、ご本人はもっと面白いんだ!」と感動した。バリの話などをして、気に入られ、パーティでも手招きされて肩を抱かれてにこにこされていた。でも、別に何を話すでもないのだ。...
とにかく長生きされていることが嬉しくてしかたない人だったと思う。転倒されて入院とされているが、死因は多臓器不全とされる。おそらくは、老衰に近かったのではないか。僕の父も91歳で老衰で逝っていて、看護しながら幸せな死だったと感じた。水木さんも、大往生といっていいのではないだろうか。
心よりご冥福をお祈りします。
ありがとうございました。

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