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夏目房之介の「で?」

映画『マッドマックス 怒りのデスロード』

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映画『マッドマックス』と立川の爆音システム

さて、清水さんとの会話の中で室町的世界から『マッドマックス』の話になった。僕も「面白い」という噂を聞いていて、しかも女性人気が高いというのが不思議で気にはなっていた。二人とも、何となくふんぎりがつかないところだったので、では、というので二人で行ってきた。清水さんによると、立川のシネマシティは今回『マッドマックス』のためにサウンドマニアの館主がとんでもない音響システムを作り上げたので、ぜひそこでということになった。
いやあ、まずは爆音すごいです。むちゃくちゃいい音なのだが、見終わってファミレスで珈琲飲んでる間もしばらく耳は遠かった。映画自体もよくできていて、終始アクション、バイオレンスの連続という映画で、なぜこれを女性が? と思うが、とりあえずこれだけシンプルな話を2時間飽きさせずに引き込むのはたいしたものである。もうほとんどハードロックのライブをみてる感じといっていい。

以下、映画の内容にかかわることも書くので、観てない人はご承知を。
映画はもうすぐ終わるというのに、会場満席で、どうやら何回もきてる客が多い印象。おまけに大多数が女性。それも若い。その理由は、映画を見て理解できた。この映画は、女性達がたたかう話なのだ。マッドマックス自身は、それ以前のトラウマでほとんど木枯らし紋次郎的なクールなポジションで、けして最強でも何でもない。というより、最初からつかまって半ば近くまで捕虜状態。面白いのは、登場する女性たちが、けして『エイリアン』のシガニー・ウィーバーみたいにマッチョで強いわけではない、ということ。戦える女性はいるが、男性の軍人相手にはまったく歯がたたない。「生む性」を象徴する女性たちは、ほとんどアクションで活躍することはない。それでもこの圧倒的に暴力的な映画で最後に勝つのは彼女たちなのである。その日はなかったが、映画が終わると拍手がおこるのだそうだ。
凡庸な映画であれば、強い女性がカリスマとなって男性権力を奪取しところを賛美して描いて、めでたしなのだろうが、そこは「そのあとどうなるかは謎」みたいな感じでさっと終わる。そのさなかにマッドマックスは人ごみに去る。彼が重要なのは、あらたなユートピアを夢想して逃げるより、元の場所に戻って奪取するほうがいいと教示する場面があるからだ。今いるところがたたかい場所なのだ、というわけだ。多分、強い女性の映画の中でも、アクション映画ではかなりよくできた、新しい感じを作り上げているのかもしれない。清水さんは、後ろの席の若い女性が違う友達を連れて8回もきたと話していたといっていた。なるほど、と思った。
見終えたあと、そのへんのところを清水さんと話し合ってまた盛り上がり、映画を観る楽しさを満喫したのであった。あ、あと戦時体制が現代を作り上げたって話も盛り上がったなあ。歴史はやっぱり面白いんだよ、と彼と話すとしみじみ思うなあ。

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