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夏目房之介の「で?」

高野秀行×清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』

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高野秀行×清水克行『世界の辺境とハードボイルド室町時代』
その昔、『手塚治虫の冒険』などを書いていた頃、まだ学生だった清水克行さんには色々ご教示いただき、お世話になった。その後、中世史の研究者となり、以前ブログでも紹介したようにNHKの「タイムスクープハンター」の時代考証などもやって活躍中の学者さんになっていたのだが、このたびソマリアに詳しい高野秀行氏との対談本を出しました。書店に出てすぐ重版するほど売れているらしい。今時の出版社では珍しいが、担当編集者が超優秀らしい。
この本、ソマリアの社会と日本の室町時代が似ているという話をしているらしい(まだ読んでないので)んですが、そのさわりは冒頭のURLで読めます。
で、ひさしぶりに清水さんが本をもって仕事場にやってきてくれて、だいぶ長く会ってないのに、まるで昨日会ったみたいに話が盛り上がりました。話は興味深く、いろんなことが新しい見え方をしてきます。少し前だと、マルクス主義的な「アフリカ段階」「アジア段階」的な概念枠組みで理解されちゃうところがある話題ですが、「進歩史観」として批判され、植民地思想のイデオロギーとみなされちゃうので、あまり学術世界ではいわれなくなったと思います。でも、似ているように見える現象はおそらくあって、そのことを考えてゆくと、また異なる問題や枠組みが見えてくる気もします。時間意識の問題なんかも面白い。
昔、中世の絵巻物に動線があるのを教えてくれたのは清水さんですが、こんどはマンガとの関連から山本陽子さんの『絵巻物の図像学』やイラン女性の描いたグラフィックノベル『ペルセポリス』などを僕が教えたりしました。この人の頭はとても柔らかく、表現力もあって、会話が楽ではずむんですね。どことなく落語の若旦那の風情は今もあって、楽しいですねえ。

8月26日発売の『世界の辺境とハードボイルド室町時代』は、人気ノンフィクション作家・高野 秀行と歴史学者・清水...
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