オルタナティブ・ブログ > 夏目房之介の「で?」 >

夏目房之介の「で?」

早大「イメージ文化史」宮本大人「速度と重力、名前と音声」

»

http://d.hatena.ne.jp/hrhtm1970/

本日、午後1時からえんえん6時半過ぎまで行われた宮本大人氏の長大講義。案の定、膨大で密度の高い問題提起に満ちた講義でありました。

早稲田大学総合人文科学研究センター研究部門「イメージ文化史」主催ワークショップ「マンガ、あるいは「見る」ことの近代」第3回(長い)として行われた宮本大人「速度と重力、名前と音声ー大正末から昭和戦前・戦中期の子供向け物語漫画におけるキャラと空間ー」(だから長い!)。いつもながら勉強になります。刺激的な観点が山ほど提出され、語り口も面白いので、飽きませんが、いかんせんほっとけば24時間でも話し続けられる人なだけに、質疑はなかなか時間を取れなかったのがやや難。これでも、夕べ準備で20分しか寝てないというのだから、まだ若いです。

三輪健太朗の議論をふまえてマンガやアニメの重力、飛行、身体、それを支える空間の問題を語り、リアリズムと重力及び空間は、厳密に見ていくと様々なバリエーションであったりなかったりするので、けっこうそれはグラデーションのように経変容いていったんじゃないかというお話から、運動、速度の問題、時間と空間の問題、さらに音声の問題を映画論(ミシェル・シオン)を引きつつマンガの音声、視点と聴取点、キャラと名付けの問題などにわたり、最後は時間がなくて猛烈な早口で(レジュメがなければほぼ唐人の寝言)圧倒的な質量で駆けすぎた講義でした。
これらを、ほとんど誰も今や知らない赤本、豆本、戦前・戦中のマンガを具体的に見せつつ語るのだが、相変わらずこの人は個々の作品の「面白いポイント」「話して受けるポイント」を掴んで提示するのがうまいので、エンターテインメントな話芸としても成り立っている。何よりも聴くと、その作品を読みたくなる(実際読んでみると、話で感じたほど面白くはなかったりもするが)。

その後の懇親会も、おおかたは知り合いであるが、新しいメンツもいて、若い人も多く、楽しく過ごさせていただきました。こういう場から、また刺激を受けて仕事をする若い人が出てくるといいですね。ありがとうございました。

Comment(0)