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夏目房之介の「で?」

珈琲実験室の珈琲

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 大崎のゲイトシティのちょっとブランド志向のスーパーで購入。じつは以前から珈琲実験室のコーヒーは置いてあったが、挽き豆だった。初めて豆を発見して喜んで買った。なぜかというと、これまで小売りで見たことがなかったから。

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 拙著『あっぱれな人々』(小学館 2001年)で「国立のコーヒー仙人」としてご紹介した関さんという方が焙煎法を確立し、それを商品化している会社が「珈琲実験室」。

 もう30年以上前に国立に夫婦で散歩にいって「珈琲実験室 コフィア」という焙煎売りのお店があり、そこで日がな焙煎されていたのが関さんだった。その味にびっくりして、以来国立に散歩にいっては大量に買い込んできた。その場で関さんのコーヒー話を伺いながら、たまに試しにいれていただいた絶品コーヒーを飲ませていただくのは、無上の楽しみだった。ふつうのコーヒーがソロかせいぜい四重奏だとすれば、いきなりオーケストラ、合唱つきみないた印象で、以来僕はずっとここのコーヒー。
 が、関さんは亡くなり、僕は離婚し、国立に行く機会もなくなり、引っ越しもし、で、なかなか国立で買えなくなった(今もそのお店はあるみたいだ)。珈琲実験室本社にご無理をいって、ご好意でときどき大量に送っていただいて飲んできた。が、いかんせん、そこらに小売りしていないので、申し訳なくもあり、大事に大事に飲んで、なくなるとお願いして送っていただいていたのだ。今はサイトを覗くと、個人でも売っていただけるみたいだが( http://www.coffee-labo-co.com/ )、当時はそういうシステムがなく、大変恐縮であった。それが、ようやく近所で買えることになったわけで、こんな嬉しいことはない。しかも、ちょうどもうあと何杯かでなくなるっていう危機的状況だったので、小躍りという心境であった。たかがコーヒーというなかれ、嗜好品とは「趣味」であるから、そういう絶対的な側面があるのだね。

 あとは、もう少し種類が多くなってくれると嬉しい。できれば、たまたま試しに売っただけで、しばらくしたら棚からなくなるなんてことのないように、ココロからお願いしたいのである。

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