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夏目房之介の「で?」

バリから帰ってきました(1)

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133  今回は、ちょうどニュピ(一日原則何もしない日)が終わり、ガルンガンというお祭でした。街には、ベンジョールという、日本の七夕のときのお飾りのような丈の高い竹飾りが並んでいます。写真はウブド。

133_2  ウブドの村の子供たちが、聖獣バロンの獅子舞を音楽つきで練り歩きます。本来は家々を回るんですが、ウブドは観光地なので、欧米人のいるレストランなどで大人気。スタバにも入っていた。観光資源ですね。寄付をもらって、村の青年会などで使うらしい。お揃いのTシャツとかを買うというから、昔の下町のハッピを揃える感覚ですかね。

133_15  ウブド市場のお寺でのお参り風景。

一体何度バリにきたんでしょうか。

 初めて訪れたのは、もう30年ほど前の話。空港のイミグレーションは藁屋根状の小屋だったし、クタのメインストリートのこじゃれた店の裏側は水田で、水牛が耕していました。6~7年後、再び訪れたら、すでに歌舞伎町か原宿のような盛況ぶりで、一晩泊まってそそくさとウブドに移動。蛍飛ぶ水田の中のコテージに感激して、以来空港からウブドに直行してのバリ旅行を、多いときで年2回、少なくとも2~3年に一回は行っていたと思うので、多分20回は越えるんじゃないでしょうか。

 もちろんウブドも変わります。行くたびに建物が増え、最初は土の上に雑然と屋台の並んだあやしい(つまり僕好みの)場所だった王宮前市場は、今回行ったら瀟洒なビルになり(正確にいうと、すでに以前からビルになり、新築されたんですが)、混沌とした地元民の市場は名残りのように隅っこに追いやられていました。スーパーやコンビニが増え、ランドリーができ、車やバイクで道はいっぱい。当然排気ガスもいっぱい。いつも自転車であちこちふらふらする僕は、なかなか緊張を強いられる状況に。王宮前市場周辺はきれいになったものの、駐車場を作らず、道もそのままなので、一方通行が増え、えらい混雑です。ここ数年は、ネットカフェができ、さらにWiFi自由の店やホテルができ、たしかに便利。欧米人はみな、スカイプで交信しています。

 まあ、経済成長とはこういうもので、日本も同じ道をたどってきたのだから、文句をいえる筋合いではない。ただの観光客としてバリに充電しにくる無責任な日本人としては、しょうがないなあ、と思いつつ、だんだんと宿を奥に替え、かろうじて蛍を見ることのできる不便な宿へと移ってきました。初めてウブドに泊まったとき、デウィスリ(水田の女神の名らしい 今もあります)という宿の、半分オープンになった風呂で蛍を見ながら入浴して感激して以来、蛍は何となく僕にとって大切なバリのシンボルになっていたようです。

133_16  ウブドの繁華街には、こんな感じのおしゃれな店も。たぶん20世紀初めか、それ以前の写真が飾られている。

133_10  新築された王宮前市場のビル

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