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夏目房之介の「で?」

1944年の映画『脱出』

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久しく借りていたDVDをやっと観た。ハワード・ホークス監督、ハンフリー・ボガード主演、ヒロインのローレン・バコールはこれが映画デビュー。戦争中に作られた映画で、『カサブランカ』と似たような話の、フランス領での反ナチ運動がらみのアクション、ラブロマンスだけど、がちがちの娯楽作。昔の映画って、ほんとに「ぴかぴかのキザでいられた」って感じだね。名セリフがちりばめられ、たわいもない話ながら、楽しんで観られる。原作はヘミングウェイの「To Have and Not Have」で、全然違う話みたい。というか、『カサブランカ』の下敷きになった映画じゃなかろうか。
http://movie.goo.ne.jp/movies/p5557/index.html
なぜ借りたか(というより一方的に貸してくれたのだが)というと、以前やはりボギーの映画を観て、ローレン・バコールがいい、といったら「これを観ろ」と渡されたのだ。いやあ、ローレン・バコールはいいです。あの表情(上目使い)、声(いわゆるハスキーボイスで、歌も歌う)、スタイル(ウェストの細い、胸元の開いたドレスでちょっと蓮っ葉に腰ふって踊ってみせる場面なんか、シビれる)、ちょっとした笑顔(かすかに少女っぽさが仄見える)、この時代のイカした女の雰囲気を出しまくってて、そりゃ人気出るだろうと思う。

ところで驚いたことがひとつ。酒場でピアノを弾いてジャズを歌う男が出てくる(彼とローレン・バコールがデュエットする)のだが、かなりうまい。ミュージシャンかな、と思って、最後のエンドロールを見ていたら「ホーギー”スターダスト”カーマイケル」って出てた。うわお、「スターダスト」の作曲者で、「ララミー牧場」に出ていた、あのホーギー・カーマイケルだったのだ。ボギーと同じくらいのトシだったんだね。

それから、付録に漫画映画(「アニメ」って書いてあるけど、昔はそう呼んだ)「Bacall to Arms」って短編が入ってるんだが、これがもうしょうもない駄作で、あんまりひどくて笑ってしまう。そう、こういう「どうでもいい添え物」が漫画映画だったんだよね。おそらく戦争中でスタッフも揃っていなかったのかもしれない。ワーナーのアニメ部門の制作だから、バックス・バーニーなんかを作ったとこだけどね。肝心のボギーとローレン・バコールが全然まったく似てなくて、どしゃめしゃな顔なのだ。珍品である。

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