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夏目房之介の「で?」

映画『ダークシティ』

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アレックス・ブロヤス監督、1998年作品。
なかなか面白い映画だった。大昔に観た「ドイツ表現主義」の映画を想起させる美術で、シュールリアリズムの影響もあった当時の想像力を、十数年前の映画技術でミステリーSFにするとこうなるんだろうと思わせる。『ノスフェラトゥ』みたいな異星人が出てくるし、いろんな時代のレトロ感覚がちりばめられている。ほかにも色んな影響が連想されて楽しい。多くの日本人が『うる星やつら ビューティフル・ドリーマー』を連想すると思うが、『うる星』では途中まで「文化祭前の多幸感」が満ちているのに対し、この映画では自分を失う強迫感が最初から全体を覆う。このあたりの違いは思想文化背景の違いなんだろうか、時代の差なのかとか、いろんなことを考える。
でも、基本的に視覚的な奇妙な体験そのものが楽しい。そういう意味では『インセプション』もそうだが、よりマニアックだ。過去の模倣の視覚的娯楽化という意味では『ヒューゴ』にも似ているが、はるかにネガティブ。でも、これらの作品に共通するものが、僕は好きなんだと思う。

http://info.movies.yahoo.co.jp/detail/tymv/id84470/

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