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夏目房之介の「で?」

『僕はビートルズ』完結

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かわぐちかいじ×藤井哲夫『僕はビートルズ』(講談社)が、10巻で完結した。
現代のビートルズのコピーバンドが、ビートルズデビュー直前の時代にタイムスリップするというお話で、即座に『バック トゥ ザ フューチャー』の名場面を思い出す作品だった。映画の中で、主人公がロックギターの歴史をたどるように演奏し、それを聴いていた男が電話越しにチャック・ベリーに聴かせる場面。そのあと、ハードロックのバリバリな演奏をして客が引き、気づいた主人公が「きみたちにはまだ早い」といって止める場面。ああいう遊びが大好きだ。
本作は、そんなお遊びを、少しシリアスに進めていて、主人公たちは日本でビートルズの曲を先に発表し、ロンドンで本物のビートルズと会う。ビートルズに憧れてきたコピーバンドの日本人が、これからデビューする本物に出会うとき、どれほど感動するだろう。多分、僕の世代の人間やビートルズ好きなら、このときの思いを想像できると思う。楽しませてもらった。

この連載が始った頃、パーティでかわぐちさんに会い、「今、初期ビートルズをカラオケで歌ってますよ」といったら、嬉しそうにされていた。そう、最近同級生の集まるバーで、時折ビートルズ大会になることがあるのだ。そして、多分世界中の同世代と、同じようにビートルズを一緒に歌うことができるだろう。
僕自身は、その当時ビートルズファンだと思ったことはなかった。でも、ジョン・レノンの訃報を仕事場でラジオから聞いたとき、ふいに涙が溢れた。時代を感じさせてくれる音楽だったんだと思う。

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