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夏目房之介の「で?」

島本和彦に『あしたのジョー』論を吹き込まれる

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小学館のパーティは、立錐の余地もない混雑ぶりで、ようやく中野晴行氏に会い、それから回遊しようと会場の半分まできたら、中央前のテーブルから声がかかった。ベレー帽をかぶり手塚風になった島本和彦さんだった。

僕が横に座ると、「さああ、行きましょうか!」と腕まくりをして、いきなり島本節の『あしたのジョー』論が熱く始まった。面白かったし、その通りだと思うので感心して(たまに突っ込みつつ)聞いていたが、あの有名なラストシーンを読んだときの印象については、小学生だった島本さんと、すでに20歳を過ぎていた僕では若干異なった。

そういうと、島本さんは僕をまじまじと見ながら「ダメですかあ、説得されませんかあ」と残念そうにいうので、「いや、全然違和感ないよ、それは島本さんの読み方として正しいんじゃない?」といったのだが、納得できないようだった。
「これを聞いたヒトはみんな、負けたあ~ってがっくりするんですよお」

いやいや、別に勝ち負けじゃないし(笑)。でも、島本さんは「じゃ、次『巨人の星』行きましょう!」と、また熱く始めたのだった。その間、僕は島本さんの背後に浦沢直樹さんや黒鉄ヒロシさん、丸山昭さんが見え、挨拶しなきゃと思いつつ、ずっと話を聞き続けた。

途中、知り合いの編集者が僕に「ダメだよ、からんじゃ」というのだが、どっちかいうと逆なんだけどなー(笑)。まあ、その長い説得工作の間に、トイレに立ったり、島本さんに話しかけるお客さんもいたりして、ようやく浦沢さんと黒鉄さんには挨拶したが、結局もうほとんど島本さんと話しただけで終わったのだった。

こういうのも面白いからいいけどね。しかし、さすが島本和彦、熱血の権化でありました。島本さん、またやりましょうね。時間のあるときに。

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