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夏目房之介の「で?」

森田芳光監督亡くなる

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http://woman.infoseek.co.jp/news/entertainment/story.html?q=21fujizak20111221015

びっくりした。突然の訃報。ネットで知り「うそだろ!」と叫んでしまった。
森田監督とは同い年で、大学時代から20代後半まで交流があった。円山町の彼の自宅でマンガや映画や色んな話をした。大友克洋の登場は僕らにとって衝撃で、彼は大友に8ミリ作品のチラシに絵を描いてもらった。スピルバーグ、ルーカスの登場は彼にとっても僕にとっても時代を画する印象があった。当時『ジョーズ』の話をしていたとき、多分僕が「今の日本では作れない」といったのだと思うが、まだ8ミリ個人作家だった彼が突然「俺だって作れるよ!」と強い調子でいったので、凄くびっくりした記憶がある。
その後、つまらない行き違いで会わなくなったが、『それから』のときは観てほしいと伝言があり、面白い映画だと感じた。誰かから、『それから』に関する僕の感想を気にしていると聞いたときは、何でそんなこと気にするんだろうと思った。もうすでにリッパな映画監督だったし。最近のものは観ていないが、『の・ようなもの』『家族ゲーム』は、好きな映画だ。

80年代以降は、全然会っていないと思うが、どこかで同じ時代を生き、マンガと映画で同じように何かをやろうとしてきた同士という感じを持っていたような気が、今はしている。
何といっていいのか、わからない。61歳、当たり前だが僕と同じトシで、突然いなくなってしまった。今夜はこれから少し飲みに行こう。

心よりご冥福をお祈りします。

追伸
お通夜に行ってきました。物凄い人数でした。

運良く大学マン研で一緒で、森田のところに一緒にいりびたっていたK氏と会い、ご焼香を待つ間小声で昔話をした。森田の部屋には、フランス映画社の社員や、のちに広告代理店に勤めるK氏など、多彩な人が集まり、マージャンをしたり(僕はギャンブルに興味がないので横で寝ていた)、8ミリを映写したり、まだ珍しいビデオデッキで映画を観たり、遊んでは話し、よく徹夜をした。僕やK氏にとって青春を過ごした場だった。その当時つきあいのあった誰彼の話もした。

「あそこは、すごいとこだったよ」
K氏は、しみじみといった。

ご焼香のあと、奥さんにご挨拶する。奥さんとも、本当に久しぶりでお目にかかった。一緒に遊んだ仲間でもあった。
「本人がいちばん驚いているんじゃないでしょうか」
そういわれた。本当に突然のことだったらしい。

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