オルタナティブ・ブログ > 夏目房之介の「で?」 >

夏目房之介の「で?」

『けっこう仮面』と柳家小さん(ん?)

»

僕はもちろん永井豪のファンであり、『けっこう仮面』なる、どうにもしょうがないギャグマンガのバカバカしさをこよなく愛する者である。そのビデオ映画があるという話を、以前知り合いに聞いたらしい。その知り合いが、TVでやっていたと録画を、何とビデオテープで送ってくれた。

が、地デジ化したら、僕の知識と能力ではビデオデッキを現在のテレビに接続できず、ビデオを観られないのである。おかげで、膨大なビデオテープの録画を観ることができないでいた。でも、せっかくなので、使っていなかった小型のモニターを、これまたいただいたビデオデッキにつなげ、何とか再生することができるようになった。

で、『けっこう仮面』のビデオ映画を観てみたが、いやあああ、ほんとにしょうもない映画でした(笑)。原作のマンガは、しょうもないことを目的に描かれたから面白いのだが、こっちはガチでしょうもないのだった。ただ、若い頃の関根勤や、故・ポール牧、プリティ長嶋などが出ていて、懐かしかったりはしたが。91年の作品らしい。

とはいえ、ビデオを観られるようになったのは嬉しくて、さっそく落語のビデオを口直しに観た。小さんの『青菜』『ちりとてちん』『うどんや』を立て続けに堪能。いやあああああ、小さんはいいなあ。うまいなあ。幸せだなあと思いつつ、じっくり観た。

何つっても、酒を飲むとこ、食い物の場面の、素晴らしいこと。『青菜』で飲む酒、『ちりとてちん』で食べる刺身や蒲焼、『うどんや』のうどん。うどんなんぞはアナタ、ふうふう吹きながらゾゾゾとすすりこむうどん、途中で鼻をすする様、つゆを飲んでため息をつくところに客がじっと見入ってしまい、拍手がくるのだ。絶品である。もちろん、腐った豆腐を食う場面もね。

ああ、そうそう。『禁酒番屋』『猫の災難』もいいなあ。今度、さがして観よう。そう思うだけで何か幸福になれる。

最近、うちのゼミに顔を出してくれるフランスの女性が、男性のカッコイイ日本語を本当は話したくて、そのかわりに美空ひばりの「車屋さん」をカラオケで歌うのだと話してくれた。いい話じゃないか。で、落語の話をしたら、落語が面白そうで興味はあるのだが、まだわからないのだという。

なんて勿体ない。解説つきで教えてあげたいよ。
その昔、六本木の飲み屋あたりで若い女性に、落語の面白さを布教してたことを思い出した。あるときには、やはり落語好きの亡くなった友人と二人でスツールに座った女の子の両側から落語を吹き込んだこともある。まるで『寝床』の旦那さんが二人いるようなものだ。

でも楽しかったなあ。何しろ思春期から落語で自分の語りを作ってきた人間なので、今ものってくると落語口調が出る。ん~む、また誰かに落語を吹き込みたい気分になってきたぜ。

Comment(2)