2011年マンガ、ベスト3とベスト5
毎年「ダ・ヴィンチ」誌と「フリースタイル」誌「このマンガを読め!」からベストを依頼される。両誌とも市場に出たので、僕の推薦分を発表します。
「ダ・ヴィンチ」誌 2011年ベスト3
エマニュエル・ギベール『アランの戦争』
ヴィンシュルス『ピノキオ』
松尾スズキ、すぎむらしんいち『老人賭博』
「フリースタイル」17 ベスト5
ニコラ・ド・クレシー『天空のビバンドム』
エマニュエル・ギベール『アランの戦争』
エド・ブルベイカー、スティーブ・エプティング『キャプテン・アメリカ ウィンター・ソルジャー』
松尾スズキ、すぎむらしんいち『老人賭博』
いがらしみきお『I(アイ)』
少し前からアメコミ、BDの名作、秀作が続々と翻訳され、今年はその重量感に圧倒された1年だった。日本マンガを入れたのはバランス感覚で、本当はもっと海外コミックのいい作品があった。なので、二つのベストに違うBDを入れた。
驚いたのは「フリースタイル」の、投票を集計した総合ベスト10にBDがランクインしてたことだ。それも6位! 『アランの戦争』である。アリソン・ベグダル『ファンホーム』も14位に入り、メビウス『エデナの世界』と『天空のビバンドム』が23位、『ピノキオ』も32位に入っている。着実に海外コミックも浸透しつつあるのかな。いいことだ。
もうひとつ驚いたのは、いがらし『I(アイ)』が総合1位になったこと。やっぱり衝撃的だったんですね。ちなみに宝島の「このマンガがすごい!」のベストには海外物は入っておらず(日本マンガだけが対象なんですかね)、1位は『ブラック・ジャック創作秘話 ~手塚治虫の仕事場から~』(「フリースタイル」で7位)。もちろん『ブラック・ジャック・・・』も面白かったけどね。ネタのほとんどを知ってたので、その分衝撃はなかったのね。
あと、『ファン・ホーム』と同率14位に、さそうあきら『ミュジコフィリア』が入ってたのも、驚き。要するに「フリースタイル」は「通好み」ってことですね。僕は面白いけど、あんな現代音楽がテーマのマンガが上位に入るんだもんなあ。
ところで、「フリースタイル」誌の「マンガ時事放談」で呉智英さんが6年前に「マンガは面白くなくなったか」論争があったとして〈俺や夏目房之介は「面白くない」と言い〉と語っている。が、僕は逆に「面白い」といい続けて、「何を読んでるんだろう?」と「面白くない」派に対抗していたので、これは記憶違いだろう。呉さんと「何で面白くないって思うんですか」って話をしたおぼえはあるが、どこでそうなったんだろう。