雲田はるこ『昭和元禄　落語心中』①

少し前から書店の平台で見かけて気になっていた。
まず、落語物であること。次に表紙の絵が、よしながふみに似ている。よしなが的テイストで落語をマンガにしたら面白かろうと思った。別に絵が似ているから同じテイストと思ったわけではないが、センスが近ければ好みかもしれないから。

読んでみたら、面白かった。
まだ一巻目で、今後「心中」的な主題になっていくのかもしれないが、今のところは話の助走。出所した元ヤーさんが、慰問にきた人気落語家・八雲にほれ込み、落語など知らない癖に、もともと弟子を取らない八雲に弟子入りする話。
八雲の家には、かつて八雲のライバルとされた助六（故人）の娘が、彼を憎みながら住んでいて、八雲と助六の複雑な過去が暗示され・・・という展開。

正直、設定があまりに『タイガー＆ドラゴン』なのでまだ新味はない。が、雰囲気的にはちょっと『こころ』みたいな過去との葛藤が感じられるので、今後変わっていくかも。
とはいえ、面白いと感じたのは、基本的に読んでいて「落語愛」が感じられるからだろう。
もちろん、この主人公のように稽古もしない素人がいきなり古典で寄席に上がって笑いが取れるとは思えないが、読んでいると何となく「落語好きなんだろうな」と感じる。

他にも落語物の女性作家のマンガはあるが、不思議と同じ感じを受けたりしない。なぜだろう。よくわからない。
ちなみに、表紙以外の絵は、よしながに似ているわけではなかった。