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夏目房之介の「で?」

八卦掌「揺身掌」ニューバージョン

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昨日の李先生講習会で、揺身掌の別バージョンを習った。いきなりやれっていわれても無理、というような連続性のある動きで、しかも会場が狭かったため、全然うまく覚えられなかった。記憶の限りでいうと、まず龍形走圏から扣歩して後ろ方向に双換掌のシテンソウチみたいな形を作り、そこから円の中心に体を開いて天地指したまま馬歩、蓋掌、逆方向へ穿掌、後ろ(円の中心方向)へ揺身掌、円の接線上で探掌2回、穿掌1回、方向変えて三穿掌(このへん回数曖昧)して葉底蔵花で逆方向の龍形に戻る、というもの。
書いてもわかる通り、円周上をやたらとクルクル回り、一周して元の位置に戻るというような動きなのだ。そんなの、覚えきれるわけもなく、野村君の動きを見ながら、何となくついていった。何とかおぼろげに覚えたものの、こりゃイケマセンというのが正直なところ。これを手の動きじゃなくて身法で、という要求はわかるので、試みるものの、なかなか方向がわからない。

李先生いわく、なぜこの動きをおぼえられないかというと、方向を変えるということがよくわかっていないからで、そもそも単換掌、双換掌でも方向の変化がきちんと把握できていないからなのだそうだ。李先生は白板に円を描いて、どこで回転し、どう方向が変わるかを図解してくれたのだが、実際にこの動きをたどろうとすると、次の動きがうまく記憶の中でつながらない。頭の中で円周のどこにいて、どの方向に向かうのかが全然認識できないのだ。

というわけで、今朝の自己練習のとき、ひさびさ公園に円を描き、街灯を中心にして、同じことをおさらいしてみた。そしたら、あら不思議、思いだせる上に、スムーズにつながるじゃないですか。まあ、かなりいい加減だろうとは思うが、円を描いてその上を動くと、驚くほど身体がそれに沿って動いてくれるのだ。手の向きなんかはあまり意識せず、体の方向の変化と身法を意識してやると、じつになめらかに連続する。ただ、この動きで円周の同じ場所に戻るには、相当大きな円を描くことになる。できれば広い公園などで練習したい掌法である。これで存分に体を開き、のびやかにやれると、すごく気持ちのいい掌法かもしれない。

馬貴八卦掌における方向の変化にはじつに精妙なものがある、とは李先生の言だが、なるほどねー。ただ、女性なんかは苦手だろうなあ。男としては方向音痴のほうで、空間把握能力がさほど高くない僕もなかなかうまく覚えられない。なぜかというと、くるっと回転した途端に何が何だかわからなくなるからだ。ちょうど、地下鉄の駅から階段で何度か方向を変えて上がると、自分が地図上のどこにいて、どっちを向いているのかわからなくなるのと同じだ。女性には、こうした空間把握とその変化を認識するのが苦手な人が多いが、逆にそういう能力をもともと持っている人(野村君などはそうだ)は、その能力のない人のことが想像できないみたいだ。できないことが理解できないと、教えるもの難しいわけで、見ていても「いきなりそれ教えても無理だよ」と思うことがしばしばある。僕としては過渡的に地面に円を描いて何度もその上で自分を回転させながら認識し、おぼえることをおすすめする。

というか、自主練習のときに円を作るヒモか何かを用意して、その上で単換掌、双換掌の方向転換を正確にたどる練習を繰り返したほうがいいな、きっと。

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