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夏目房之介の「で?」

とり・みき『クレープを二度食えば』

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とり・みき『クレープを二度食えば』(徳間書店)をお送りいただきました。ありがとうございます。
ほとんど、過去に読んだ、とり・みきの思春期ストーリー物SFですが、いい本だと思います。とりファンとしては、久しぶりに彼のストーリーSF短編の切れ味を堪能できて満足です。とりさんは、もちろんギャグマンガの作家として知られるわけですが、じつはこうした短編もすごくいい。ご本人は恥ずかしがってるみたいですが、この作家のすぐれた資質を示す作品群ですね。
とくに冒頭の『もうひとつの転校生』(2008年)は、大林宣彦の特集本に収録された、映画「転校生」のサイドストーリー的な作品で、男女が入れ替わってしまう当の本人たちではなく、彼らとすれ違うような関係にあった男性を主人公にして、キレのいい短編に仕上げています。男と女って何なんだろうと、最後には考えさせるつくりに感心します。
表題作も、92年の作品ですが、こういうテイストのコメディって好きです。いいなあ。

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