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夏目房之介の「で?」

『マンガに人生を学んで何が悪い?』

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ようやく入学試験のお手伝いも終え、「からだの文化」の単行本用原稿も第一段階を越え、少し楽になりつつある。そんな中、しばらくナイトキャップに自分の本を読んでいた。本は『マンガに人生を学んで何か悪い?』(ランダムハウス講談社 2006年)。自分ではけっこう好きな本で、僕なりに読者論を組み込みつつ、この時期に書けることは存分に書いた気がする。でも、あまり評判にはならなかったなあ。けっこういいこと書いてる気がするんだけど、好き放題書きすぎたんだろうか。

この本は、以前書いた『青春マンガ列伝』(マガジンハウス 1997年 のちちくま文庫『あの頃マンガは思春期だった』に)の流れでもあって、人生とマンガを織り合わせるシリーズ。僕の中では、『あの頃』が自分史とマンガを織り合わせ、小説に近い青春期エッセイを狙ったもの。『マンガに人生』が、も少し普遍化した人生論に近づけたもの。『あの頃』は多分、その頃にしか書けないと思って書いたのだが、自分的にはなかなかいい線だったと思う。
じつは、週刊朝日の仕事から派生した『人生の達人』『あっぱれな人々』という人生いろいろ物、自分を中心に同じテーマをたどった『これから 50代の居場所』『おじさん入門』へ続いた路線とマンガ論を合流させてみたかったのだった。

そんなわけで、今は寝る前に『あの頃』を読み返している。
これ読むと、自分がいかにしょうもない奴だったか思い出せて、少し安心するんだよね。

この本の文庫版には、えのきどいちろうさんからすばらしい解説エッセイを書いていただいた。今読んでも勇気が出るなあ。ありがたい。

ともあれ、この2冊は自分で好きな本です。

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