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夏目房之介の「で?」

諫山創『進撃の巨人』1~2

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京都の集中講義後、食事会から帰る途中で書店に入った。増田のぞみさん、泉信行(イズミノ・ウユキ)さんと一緒だったが、泉さんが薦めてくれたのが諫山創『進撃の巨人』1~2巻(講談社)で、その日、京都のホテルであっというまに読んだ。
東京に帰ってからヤマダトモコさんが発表してくれた自主ゼミがあり、そこに参加してくれた金田淳子さんが、ゼミ後の食事会のときに強くオススメしたのが、やはり同作品だった。
間違いなく面白いマンガである。客家の住居みたいな、高い塀に囲まれた都市にかろうじて生存する人類と、彼らを食う謎の巨人たち。閉塞した中で長い時代を過ごしてきた人類を中心に描かれ、謎の巨人はみななぜか男性型で、大小がある(へんに顔のでかい巨人がおかしい)。彼らと絶望的な戦いを強いられる人類の兵器は、これも奇妙な現実感のレベルで設定され、要するに巨人によじ登って、首の後部をそぎ落とす他殺すことができない。
この作家のうまいとはとてもいえない画は、たまに何が描いてあるのかわからないコマもあるほどで、マンガとしてもう少しうまければ、と思う場面もある。が、この「うまくない」ところが異様な迫力になっていることも確かで、ヘタにうまくなられるとこのマンガの面白さも失われるかもしれないと思わせる。何となくそういう思いを作品内の不安と対応させてしまうところも「面白さ」かもしれない。また、この世界の閉塞と平和を破る感覚は、たしかに今の我々の「外部」にかかわるものだという感触はある。
泉さんは、僕が発表したマンガの身体にからめて薦めてくれたのだが、どうやら主人公の少年兵士は巨人の脊椎に合体して巨人を制御するらしい(このへんはまだ単行本には描かれていない)。なるほど、拡張された身体としての巨大ロボやアーマーの延長で考えると面白いマンガかもしれない。

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