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夏目房之介の「で?」

NHK「タイムスクープハンター「石つぶて 紛争調停人」 」

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深夜帰ったら、やっていた。
前にも偶然観たが、室町の共同体の騒乱、つぶて打ちとそれを仲裁する中人の話を、タイムトラベルした調査者が歴史ドキュメントとして追うという設定で、よくできている。カメラも戦場ドキュメント風で、騒乱が夜に入ると赤外線映像になったり、手がこんでいる。面白い発想の番組で、NHKだからこそできるところも興味深い。前に観たのは戦国の金山の現場だったが、今回のほうが面白かった。
http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20100531-12-06388

追伸
http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=701-20100528-21-03391
そのあとの、江戸~明治にかけて米相場情報を伝えた、山伝いの旗振りによる伝達を扱った「速報セヨ!旗振り通信」も面白かった。江戸時代には飛脚業を守るため、禁止されながら続き、幕末に解禁されたという。驚いたのは、大阪の相場情報が山伝いに岡山の相場に届くのにわずか18分だったという。米相場は投機対象であり、のちの先物取引の元祖らしい。知らなかった。江戸期の商品市場と投機システムを思わせ、なるほど近代はすでに経済において成りたっていたんだなと感心。勉強になるなあ。

この番組の狙いは、歴史の本に名の残ることのない、それこそ坂本龍馬物に登場しない、名もない人々の作る歴史の局面を描くところにある。歴史の面白さを伝える、とてもいい観点だと思う。

追伸の追伸
結局、そのあとの村の和算塾の話まで観てしまった。面白かったあ。
これ、いい番組だなあ。歴史好きにはたまらんなあ。
http://pid.nhk.or.jp/pid04/ProgramIntro/Show.do?pkey=001-20100528-21-03395

追伸の追伸の追伸
くりびってんぎょう!!
何とこの番組の歴史考証、資料提供は、昔からの知り合いで中世史研究の俊英・清水’若旦那’克行君であった!
彼は、昔僕が講演したときに話をしたのが縁で、大学生の頃から『手塚治虫の冒険』の元になった講義や『マンガの読み方』制作のための議論にも参加してくれた人なのだ。僕に中世絵巻物のマンガ的表現を教えてくれたのも彼だった。この番組は、彼のサジェスチョンをかなり忠実に取り入れ、細かいところまでタッチしてできたらしい。なるほど、面白いはずだ。
彼はすでに、何冊も本を出していて、「石つぶて・紛争調停人」の回は、彼の『喧嘩両成敗の誕生』が事実上の原作 といっていいのだそうだ。いやあ、奇遇!

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