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夏目房之介の「で?」

現代マンガ学講義(2)-1

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2010.5.13~  現代マンガ学講義(3) マンガとは何か? 市場特性及び海外との比較と仮説

3)マンガ青年化の主要な主題=「性と暴力」 思春期~青年期の課題

日本マンガ市場の特性 

a)出版全体への占有率(※流通的に「コミックス」「コミック誌」と認められるもの

 発行部数36.7% 114757万冊(単行本47847万冊、雑誌66910万冊)

 販売金額 22.2% 4483億円 薄利多売=大量生産商品

b)対象年齢別市場構成 子供向け雑誌 33028万冊 大人向け雑誌 33883万冊(半分が大人向け

 日本以外では見られない市場規模と大人向けマンガ誌の規模

※出版科学研究所「出版月報」2009.2「コミックレポート2008」創出版「創」2009.5「変貌するマンガ市場」

c)対象年齢(性別)の曖昧な「少年」誌、世代別マンガ誌「棲み分け」の存在

 「週刊少年ジャンプ」男女の小学生~中年読者 小学館「ビッグコミック」などの世代別青年誌

参照 図表1「大手3社の主要コミック誌のラインと競合誌」「創」2006.6「マンガはどこへ行く」28p

 多様化し重層化した読者層と媒体の構造

d)「少女マンガ」の発展(60~70年代)による女性による女性向けマンガ市場の拡張

e)TV、映画(アニメ、実写化)、ゲームなどメディア・ミックスとマーチャンダイジングの大規模連携

なぜ、こうした特異な市場規模、構成が成立したのか?

マンガ読者層(戦後ベビーブーマー)の成長とともに受け入れ媒体が拡大成長した結果

参照 図表2 80年代に成長した青年誌市場のグラフ(夏目房之介『マンガ 世界 戦略』小学館2001年 211p

手塚的成長物語の導入(~50年代)→対抗・若者文化の「性と暴力」表現導入(60~70年代)→市場爆発(商業的発展と市場分化)→子供~大人への連続的マンガ市場の確立70~80年代)

主題的特徴=思春期、青年期の課題としての「性と暴力」主題の積極的導入(娯楽性とのバランス

仮説 〈人は二度の大きな変動期をへて成長します。最初は三歳頃まで、次が一〇代前半の思春期です。このとき人は自分を変えねばなりません。子どもの自分を変え、殻を破って生まれ変わるために必要なのが暴力のシメージなのです。ロックンロールに象徴されるような若者の自己変革イメージが、日本ではマンガの手法として継承されたのだと思います。/七〇年前後の日本には青年期主題に対応する過激な作品が多く生まれ、社会的バッシングをはねのけて市場をつくりあげました。/[]こうして一〇~二〇代の、子どもと大人の中間層向けに、多くのサブジャンルが生まれました。七〇年代に少女向けマンガを描く女性作家が、きわめて高度な表現をつくりだしたことも、その一つでした。/[]そこには一〇~二〇代の青年のもつ主題がリアリティと切実さをもって含まれていたのです。バッシングもありましたが、マンガの影響で日本犯罪大国になることもありませんでした。結果的にマンガ表現に寛容な社会をもたらしたわけです。〉前掲 夏目『マンガ 世界 戦略』216~218p ※ケルン日本文化会館における講演「日本マンガはなぜ世界の若者に受けるのか?」2000年より

参照 図表3 「国別マンガ市場の変遷」前掲 夏目『マンガ 世界 戦略』213p

海外コミックとの比較対照によって見えてくる日本マンガの特徴であること

綿密な調査による分析ではなく、著者の渡航取材による印象論的仮説にすぎないことに留意!

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