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夏目房之介の「で?」

パリコンミューン期の戯画とヴィルヘルム・ブッシュ

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3日は自主ゼミに学習院の川口先生がわざわざ私物の資料、パリ・コンミューン期に出ていたイラスト新聞などの実物を中心に持ってきていただいた。それだけでもありがたいのに、ちゃんと絵の解説やレジュメ、参考書までご用意いただき、恐縮の極みであった。ほぼ明治初期にあたるパリの、コンミューン側と反コンミューン派の新聞戯画は、政治的な条件のみならず、当時の国際状況、生活を感じさせる道具、服装、建築のありよう、印刷技法、写真との関係など、多くの問題が浮き彫りになって、壁新聞であったというメディア特性も含めて、ものすごく勉強になった。言葉のシャレや事象の戯画的な記号化など、明治初期の戯画、錦絵新聞などと共通する読解の難しさもある。また少し後に出されたイラスト集には、アメコミにもつながるような人物造形があったり、興味深いものだった。

ゼミにはササキバラ・ゴウさんも参加され、聴講生の持ってきたヴィルヘルム・ブッシュ(今もドイツで売られている19世紀のイタズラ小僧マンガ『マックスとモーリッツ』の作者)の作品集を見ながら、動線などの記号的表現の生成過程などについて、面白い話になった。いやあ、ブッシュも面白いなあ。自主ゼミでありながら、非常に充実した一日でした。

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