オルタナティブ・ブログ > 夏目房之介の「で?」 >

夏目房之介の「で?」

水木しげる画業60周年記念パーティ

»

水木御大の米寿もあわせてお祝いするパーティが帝国ホテルで行われ、出席してきた。
僕も、ずいぶん色んな祝賀会などに出ているが、こんなに楽しい気分で幸せになった会は滅多にない。娘さんが挨拶で「水木にはしあわせ菌がついているらしい」とおっしゃっていたが、本当にそうだと思う。水木さんが、奥様と一緒に高々と手を挙げて入場された瞬間から、そこには目に見えない楽しい気分が粒子のように漂い始めた。
京極夏彦さんの司会も楽しかったし、荒俣宏さんの自称「コンシェルジュ」も素晴らしかった。京極さん編集の15分の水木伝映像は、ぜひ豪華本の付録にでもつけてほしいほどのデキだった。が、何といっても水木さんの娘さん、弟さんらの挨拶や、水木さん、奥様、娘さんの家族漫才の素晴らしさたるや、筆舌に尽くしがたい。やはり、水木さんのユーモアは、この家族に遺伝的に感染してきたものなのだ。
水木さんに、久しぶりにご挨拶し、そのあと、池上遼一さんがご挨拶しているのを見て、かつて十代で「ガロ」にその見事な絵を発見し、その後、水木マンガに同じ絵を発見した頃を思い出し、勝手に舞い上がってしまった。池上さんに伺うと、じつは本当は大阪でさいとうプロなどに入るつもりだったが、人員一杯で入れず、そこに「ガロ」を見た水木さんから声がかかったのだそうだ。幸運というべきかもしれない。
宮原照夫さんにも、ひさしぶりにお会いして、『鬼太郎』連載の頃のお話を伺えた。宮原さんは、当時のマンガの表現を変えようとしていたのだが、水木さんの独特なコマ構成の飛躍はどう思ったのかと伺うと「あれはもう水木さんの味だから」といわれた。
こうしたパーティでよくお会いする人々と会いながら、ずっと幸せな気分だった。水木さんの評伝を書かれた足立倫行さんともお会いして、長く絶版だったあの貴重な評伝が新潮社から再刊されるという嬉しいニュースを聞いたし、欧州に水木の名を知らしめ、しかもアングレームでいきなり賞をとった『のんのんばあ』をフランスに紹介したコーネリアス社のジャン・ルイ氏にも会って、嬉しかった。きれいな奥様を同伴されていた。

本当は、余韻を楽しみつつ、呉さんや南伸坊さんとお茶でもして帰りたかったが、明日は甲府で夜話があり、朝が早い。しかたなく、8時には会場を辞し、山手線に乗ったが、それでも家に帰るまで気分はしあわせだった。水木さん、ありがとうございました。

そうそう、おめでとうございます!
この言葉を言い忘れてしまった!

Comment(1)