ササキバラ・ゴウ氏のブログ「まんがをめぐる問題」は凄い!
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本日のゼミは、原正人氏によるティエリ・グルンステン『線が顔になるとき』(人文書院)についての発表で、何と!!!原氏の紹介で訳者・古永真一氏がゲスト参加してくれました。何て贅沢なゼミなんだ! ただ、グルンステンの議論を、日本側の問題意識にひきつけて着地させるのは、なかなか大変。笹本純氏の論文ほか、いくつかの議論をかませて、引き寄せてこないと難しいなというのが実感ではあった。この議論に関しては、今後もゼミで続けるつもり。
ところで、この議論に関して原氏がゼミMLで紹介してくれた、ササキバラ・ゴウ氏のブログ。
まずは『線が』の書評ですが、
これよりも、瀬川氏から教示された「まんがをめぐる問題」というブログ!
これが凄い! 欧州で近代コマ連続マンガの元祖とされているテプフェルについての、かなり詳しい紹介と分析。
我々が「マンガの絵」「記号的な絵」などと呼んでいるものは何なのか。コマと呼んでいる現象は、そもそもどういうものなのか。そういう原理的な場所から考えてゆく論考で、マンガ研究の人には必読の探求だと思います。かなり興奮しました。とくに、テプフェルのコマとコマの間に、眼に見えない「関係」そのものが生成するところが、19世紀において新しい表現だったろうというあたり、コマの原理論にとって非常に重要な観点で、ぜひとも多くの人に読んでほしいところです。勉強になりました。それにしても、こんなに厳密に原理的な検証をしていく人なんですねー。来週は、このブログについて瀬川氏に発表してもらう予定。
追記
グロンステン『線が顔になるとき』ですが、顔の絵、という観点から絵画やBD、マンガあるいは哲学など広く目配りしつつ、現代のBD、マンガに通じる表現上の諸問題に触れてゆく本で、グロンステンという、フランスのBD・マンガ研究では大変有名な人の初翻訳本です。すでに英訳もいくつか出て、欧米圏では知られる研究者であり、今の日本の研究状況がほとんど接点をもたないでいる「世界」の水準を示す一つの例となるはずです。今後、日本の研究と「世界」が出会うためにも貴重な翻訳であることは間違いありません。
が、いかんせん、僕は昔から翻訳文体が全然読めない人なのです。言葉がまったく意味として頭に入ってこない。なので、正直一読しただけでは、そこで論じられていることがよくわからない。ササキバラ・ゴウ氏の文を読んで、ようやく問題意識が具体化したくらいのもんなんです。
なので、古永氏にゼミで向こうの研究の例を話していただくと、わかる。その話はとてもよくわかるし、興味も湧くんですが(古永さん、おつきあい、ありがとうございました!)、翻訳の評論、論文が読めない。ただでさえ本読むの遅いのに、困ったもんです。
というわけで、こういう本を読むのが得意な人に教わっていこうと思う次第です(とほほ)。
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