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夏目房之介の「で?」

現代マンガ学講義16 視線誘導について(1)

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・・・・のレジュメを公開・・・・と思ったんですが、準備不足のままアドリブでやっているので、全然まとまらず、抄録にします。学生たちにとっても、ちょっとわかりにくい感じだった印象です。う~ん。

1)  視線誘導とは? わかりやすい具体例 (青年マンガ

A) 佐藤秀峰『ブラックジャックによろしく』9 講談社 04年 #86「スイッチオン」 138~147p

視線=顔~(めくり)~セリフと奥行き→セリフ→顔 +コマ構成による圧縮効果

B)浦沢直樹×手塚治虫『PLUTO』1 小学館 04年

○7~9p ニュース音声と会話の並行(文字情報の多層化

物語内の「ロボットが不明確な感情のようなものを自らに発見する切なさ

→読者が明確な感情を読めない「ロボットの顔」に感情を読もうとする詐術

→人が、目鼻を連想させる図柄に「何か」人間的なものを見てしまう「本能(?)」

以上は、場面を具体的に分析し、コマ構成や絵柄、読者視線のモデル図を提示。

2)わかりにくい視線誘導の例

タイ(バンコク)の同人誌的なマンガ Comic Quest(おたく系マンガ情報誌

新人発掘→ 『??? The Crocodile Crisis』 絵はうまいがムダなコマが多い

視線誘導も甘い 参照→ コマ割変更の試み 左右時間流による変更

もうひとつ、日本の例をとって視線誘導がうまくいってない点を指摘。タイの例は、2001年に調査旅行したときに、現地で原稿を見てサジェスチョンした作品なので、こうしたほうがいいという例をモデルとしてネーム化してみた。

3)  視線誘導の形成因子

直接の誘導因

01)人間 ・ 顔、頭 ・ 目、口、耳 ・ 手、足

02)文字 ・ セリフ、ナレーション、音喩

03)背景など ・ 背景の奥行き、稜線 動線、効果線(集中線)など

※いずれも、余白など、周囲の空間との相対関係で方向付けされる

人間はまず人間の姿、顔、そして目を認知する → 参照

本能的な認知形式 図形化されたものを「顔」として認知する能力

基礎的な条件

01)コマの時間流の方向・圧力 右→左 上→下 右上→左下 

 参照→ 夏目他『マンガの読み方』宝島社 95年 177p 179p

02)コマ形態と相互関係による圧縮・開放効果

 参照→ 同上 197p

03)紙面としての見開き、及びめくり効果 ノドとハシラの問題 左右上のコマの重要性

 参照→ 同上 202p

紙面(見開き)画面に時間が加わったために生じる基礎画面の性質 203p、205p

ページの「たわみ」やノドのツマリ感→読者視線に与える歪み(脳内での変容)

 参照→ イズミノウユキ『日本の漫画をめくる冒険』ピアノ・ファイア・パブリッシング 08年

 6p 13p 〈仮想アングル〉 〈視線の流れ〉→〈コマの中のベクトル感〉

コマ(紙面=画面内の時間分節機能)がないと方向性は生まれにくい

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