ゼミ「BSマンガ夜話」討議用資料
以下、学習院のゼミで行った「BSマンガ夜話」についての討議用資料です。
2008.6.18 4~5限ゼミ BSマンガ夜話について 夏目房之介
資料 「夏目の目」 (T.A瀬川氏の協力による)
----------ブログ「夏目房之介の「で?」」過去記事----------
「夜話の準備と八卦掌」
今日は夜話の「夏目の目」のネタを作った。
というわけで「夏目の目」の作り方を公開しちゃうぞっ!
よぉく聞いて、キミもやってみよう!(やるなやるな)
1)まずマンガを4作ぶっ続けで読みます。限度は50冊です(笑)。それを過ぎるとテンションが落ちて、ネタを忘れます。
2)読むときに、作品が今いちだったときは「このマンガは面白いんだ、面白いんだ」と自分に呪文をかけ、そのマンガを好きな人の気持ちになります。
3)読みながら「面白いとこ」「ヘンなとこ」「気になるとこ」「使えそうなとこ」などに、かたっぱしから付箋をはっていく。途中で「今回はこのネタ!」と決まったら、その線に沿ってはる。完全に確信がもてたら、あとはただ楽しんで読む。
4)林のように立ったすべての付箋のページをコピーする。必要なら、過去の批評、作家のインタビュー、マンガ家名鑑など資料もコピーしておく。
5)コピーを見ながらネタの構成を考え、コピーの取捨選択をおこない、流れやオチを考え、コピーを並べかえる。
6)大体つかめたらワープロにメモを打ち込む。この段階でネタの流れにしたがって再度コピーしたり、入れ替えをおこなう。
7)メモができたら、コピー図版と照らし合わせ、それぞれにナンバーをわりつけ、再びコピーしてNHKBS局にFAXする。
8)あとは当日、直前に読み直し、スタジオで図版を見せるスタッフと打合せ、本番にのぞむ。時間によっては途中をアドリブではしょったり、逆にその場で思いついたことを話す。
9)成功すればいい気になり、デキが悪いと落ち込むが、すぐ忘れる。
(危険ですので絶対まねしないでください。お願いです)
さぁみんな、わかったかな? どんなお仕事も大変なんだよ。はげましのお便りを出そう!
[後略]
Posted by natsume at November 26, 2004 11:31 PM
----------以下「マンガナビ」インタビュー(部分)----------
僕が本気でマンガを批評の対象としてやろうと思ってから、ある作品を取り上げようと思ったらまずその作品を読むじゃないですか。読むときにいろんなことを考えて、絵のこととか、演出のこととか、いろんなことを考えながら、何か引っかかったところに全部付箋を貼っていくんですよ。
で、最終的にその付箋を貼ってあるところを全部コピーします。で、コピーを見て、ジャンルわけというかカテゴリーわけをして、一番語ったら面白いところ、たとえばBSマンガ夜話だったらそのなかで5分で語って面白いところのポイントを見つけて、それをみて、それがコマの働きである場合もあればせりふ
の面白さである場合もあれば、みたいにいろいろポイントが見つかるわけじゃないですか。線のおかしさである場合もある。そこに焦点絞ってやるんですよね。
焦点絞るというのはどういうことかって言うと、コマの特徴だったら、見ていてなんだか、それが特徴的だなって思ったことなんですよ。思ったことっていうのはそれを言葉に代えたときに抽象化されます。
なので、何枚かの自分が特徴的だと思って付箋を貼ったところの集合をずーっと見てると、共通点が見つかるので、共通点を言葉にしてやるとそこに理論が生まれるわけですよね。この人は必ず右上の入り口の部分を断ち切りにするとか。そういう理論であったり。作者のそういう癖なんだと。逆に全部断ち切り
になってるとか、そういう癖が見つかるんですよね。
ただ、マンガの場合にいえるのは、それを文法として考えちゃうとみんな同じように描けばいいんじゃないってなりやすいんですけど、そうじゃないんですよ。その人その人の修辞法と考えるべきなんです。その人の文体。だらだらした文体もあれば、きちっとした文体もある、やたらめったら文節を短くする人もいる。というのと同じなんですよ。
そこで、それをどうすれば面白いかと考えるべきなんです。それを考えながらやっていくと、例えばこの人の場合は効率的な視線の誘導が作風にあっているとか、それが滑っていて面白みにつながってない人であるとか、色々なケースがあるんですよね。逆に効率的に視線を誘導してしまうことによってその人の味をなくしちゃうこともある。それは本当に微妙で、体の動きと擬音とスピードラインとか間のラインをきれいにあわせちゃうと、目に引っかかりがないということになるんです。
つまり読みやすいけどつまらない。
日本の漫画の特徴は実はここにあって、必ず引っ掛かりを入れるんですよ。これが、ある種の人には非効率に見えるんですね。海外の方とか。ところがそここそが味なんですよ。全体としてはものすごく速く進んでいるコマ構成と演出なのに、なんか引っ掛かるというのは、必ず目線を受け止める擬音とか、コマ
の形を作ってるからなんです。それができているかどうか。
問題は相関関係なんですよね。スムーズなだけがいいのではない。視線誘導論ってのは一見スムーズなことが全てのように語るんだけど、じつはそうではないんですよね。
要は緩急なんですよ。結局は自分が面白いと感じるかどうかなんですけどね、新人の場合だと描いてきた作品がそのままじゃ面白くないことが多いじゃないですか。でも何か面白さがある感じはする。でもそれがはっきりと出てない。
どうしたらそれが出るのかっていう工夫が必要になってくる。その本質はおそらく技術というよりも、何か他のものなんでしょうけどね。取りあえずそれは考えないとすれば、技術的にそういう工夫をすることは可能です。流れすぎているのか、滞りすぎているのか、という診断になったりするんじゃないでしょ
うかね。
URL:http://manganavi.jp/featured/susume/20070921/index.php?p=5
略史 マンガ言説と「マンガ夜話」
1960年代 ガロ、COM 第一次マンガ世代(‘50年前後生)青年読者化
COM系 鶴見俊輔、尾崎秀樹、佐藤忠男、草森紳一、峠あかね(真崎守)ガロ系 石子順造、「漫画主義」同人 他 副田義也
1970年代 マンガ産業化 青年マンガ、少女マンガの充実
石子順造『現代マンガの思想』太平出版 70年
清水勲
後半期~ 橋本治、荒俣宏、村上知彦、米沢嘉博、亀和田武、中島梓(第一次マンガ世代の発言権拡大)
1980年代 「ガロ」「宝島」「ビックリハウス」など、いわゆる「サブカル」系雑誌における読者言説の浮上 コミケの拡大 「おたく」の登場
呉智英『現代マンガの全体像』情報センター 86年
大塚英志『商品/テキスト/現象 [まんが]の構造』弓立社 87年
夏目房之介『夏目房之介の漫画学』大和書房 88年
手塚治虫逝去 89年 昭和天皇、美空ひばり、田河水泡死去
(東西冷戦終結、東ドイツ崩壊、天安門事件
1990年代 「表現論」の登場 キャラ多層性の進展(マルチ・メディア化
インターネット環境の進化 マンガ市場の飽和と崩壊 世界的『ポケモン』ブームとマンガ・アニメの世界化現象
竹内オサム『手塚治虫論』平凡社 92年
東京サザエさん学会編『磯野家の謎』飛鳥新社 同年
夏目房之介『手塚治虫はどこにいる』筑摩書房 同年
木股知史『イメージの図像学』白地社 同年
四方田犬彦『漫画原論』筑摩書房 94年
中野晴行『手塚治虫のタカラヅカ』筑摩書房 同年
大塚英志『戦後まんがの記号表現』法蔵館 同年
95年 マンガ、出版の市場規模最大に 以後急落
夏目房之介、竹熊健太郎他『マンガの読み方』宝島社 95年
夏目房之介『手塚治虫の冒険』筑摩書房 同年
いしかわじゅん『漫画の時間』晶文社 同年
岡田斗司夫『オタク学入門』 96年
1996年夏 「BSマンガ夜話」第一弾放映
同 NHK教育「人間講座」夏目房之介「マンガはなぜ面白いのか」放映
「ユリイカ」96年8月号特集「ジャパニメーション!」
宮本大人、秋田孝宏、細萱敦ら「マンガ史研究会」発足 97年
夏目房之介『マンガはなぜ面白いのか』NHK出版 同年
「ユリイカ」97年4月号特集「J-コミック‘97」
2000年代 日本マンガ学会設立(01年
中野晴行『マンガ産業論』筑摩書房 04年
伊藤剛『テヅカ イズ デッド』NTT出版 05年
「ユリイカ」06年1月号特集「マンガ批評の最前線」
小田切博『戦争はいかに「マンガ」を変えるか』NTT出版 07年
※ここに「夜話ネタを含むネット上マンガ論の進展」という項目が必要