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夏目房之介の「で?」

明治大学国際日本学部記念講演会

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・・・・に、マンガ史研の会合が振り当てられたので、ゼミ生にも情報流した手前、行ってきました。いささか疲れていたので、ほんとはやめようかと思ったんだけどねー。

【記 念 講 演 会】 http://www.meiji.ac.jp/koho/pickup/2008/080421.html

   14:25 かわぐち かいじ 先生(漫画家)
        「マンガ表現の面白さについて」
   ※(講演者紹介:藤本由香里 明治大学国際日本学部准教授)
   15:20 休 憩
   15:30 鹿島 茂 明治大学国際日本学部教授
        「サン・シモン主義と渋沢栄一」
   16:10 休 憩
   16:20 高山 宏 明治大学国際日本学部教授
        「メディアの近代史――イグナチウス・デ・ロヨラとマーシャル・マクルーハン」
   17:00 閉 会

いやぁ、凄いメンツです。かわぐちさんにも、久しぶりにお会いできたし・・・・。
でも、それ以上に凄いのが、鹿島茂氏と高山宏氏の演題!
一体、これ、何の話だ?・・・・ですよ。でも、これがアナタ、むっちゃくちゃ面白かった。

まず鹿島茂氏は、じつは著書『怪帝ナポレオン3世』に感動していたのですが、しかしナゼ渋沢栄一? と思ったわけです。で、話が進むにつれ、渋沢が明治維新の1年前に渡仏したとき、影響を受けた銀行家が、じつはサン・シモン主義者であった、というじゃないデスカ。すでに、サン・シモン主義が、昔マルクスの本で読んだような空想社会主義ではなく、むしろベンチャー的な資本主義思想で、ナポレオン3世はそれによって、いわば「開発独裁」(ここは僕が鹿島さんの本を読んで理解した部分)をなしとげたっていう理解をもってたので、一発でその意味するところがわかった! まさに、サン・シモン主義的な金融と社会資本充実と公共事業及びその民間売却を渋沢は行い、それによって明治維新以後の日本産業化は成功したのだ、と。そそそうだったのかあ!

じつをいえば、なぜ明治維新は、ルソーすら訳されていない状態から、一気に近代化、資本主義化に成功したのかというのが、僕の高校時代に胚胎した大疑問で、以後ずっと謎に感じていたことだったので(それで史学科に入ったくらい)、大げさにいえば40年ぶりに、その謎が解けたのであります! 鹿島先生、ありがとうございます!

これですでに十分感動していたのに、次の高山宏先生の怪人ぶりたるや、もはや言語を絶するというか・・・・終わったときには、猛烈な音楽や圧倒的な落語でも聴いたあとのごとく茫然自失。
何しろ、上智大学で知り合った神父さんがイエズス会で、今でも種子島のあのイエズス会は日本にいるのだという話から、なぜ河童の伝説は九州に多いのか、メディア(巫女)であった出雲の阿国はなぜ金のクルスをさげた絵を残したのか、日本の演劇の中でなぜ歌舞伎に視覚的な要素が強いのか、プロテスタントに対抗してカソリックがとった偶像・聖画・演劇などの積極起用とイエズス会の関係、映像を介した記憶術で聖書などを記憶し(それは、まるで密教のマンダラ修法のような、あるいは求聞耳法のような記憶法だったらしい)、聖書を焼かれても布教ができるように努力したのもイエズス会であり・・・・という話から、ついにマクルーハンの周辺にはじつはイエズス会士が多く、あの『声の文化、文字の文化』のオングもそうだった(!)という話につながり・・・・、いやもう、頭ぐーるぐるでぶっ倒れそうでしたよ。

驚いたなー。講演始まる前の司会の先生の高山氏紹介が「学魔」「高山ワールド」など、いいのかオイ、って感じだったのだけど、あれくらい強烈な紹介がないと、ちょっとヤバかったかもしれません。いやいやいや、いいもの見させてもらいましたです。こんな大変で面白くて疲れた講演会は、まずない。終わったの、5時半。僕としては、じつに感動の一日でありました。
ただ一つだけ付け加えれば、あんな怪物さんたちと一緒の大学に呼ばれないで、俺、よかったかもー(笑

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