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夏目房之介の「で?」

70年代に表現論は勃興したか?

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伊藤剛氏のコメントに:

>「マンガを内側から語る」という批評は、『マンガ芸術論』などで展開されています。

僕も最近、ちょっと部分的に読み返しましたが、たしかにそうでした。
時間ができれば「白土三平言説略史」とからめて石子さんの議論を検討できないかと思ってますが。


>方法としての達成は、見た限りでは石子順造のものが圧倒的に優れており、むしろ問題は「なぜ表現論は70年代前半には勃興してもよかったのに、90年代まで持ち越されてしまったのか」という問いに収斂していくと思います。

今からは、そう見えると思います。が、その時代をマンガ青年として過ごした者の実感でいうと、「勃興」はありえなかったということになります。
まず、何よりも言葉が共有されない。石子さんの問題意識は、その直後にマンガ言説を担うことになる団塊直下の世代には、まだわからなかったといっていいんじゃないでしょうか。おまけに、石子さんは「今のマンガはどんどんダメになってる」言説になってしまって、「今のマンガは面白い」と思っていた団塊直下世代と断絶を作ってしまった。そのため忘れ去られた面があると思います。だから、伊藤さんらが指摘した90年代の「マンガは面白くない」言説に対する危機感が僕なんかは強いんです。が、多分、そういってる人たちには、そもそも石子さんたちの言説の継承そのものが課題としても意識されてないし、あまり危機意識もないんじゃないかと思います。

>そのへんは先日出た拙著『マンガは変わる』の書き下ろし序文で書いてます(青土社から献本行ってますよね?)。

いただいてます。ありがとうございます。
あれは、いい本です。『テヅカ イズ』を読み直すガイドとして、とてもいいし、それ以上の伊藤さんの色んな側面があらわれていて、いいタイミングで出たと思います。ただ、ここのところ僕は本が全然読めず、読了したのがつい最近で、書くタイミングを逸してました。面白かったですね。

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