『ザ・ワールド・イズ・マイン』「夏目の目」のレジュメ
・・・・というわけで、だいぶ削ってしゃべった「夏目の目」のレジュメ原文です。小文字、下線入り部分が削った分。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
BSマンガ夜話 2007年11月27日(火)24:00~
1)新井英樹『真説 ザ・ワールド・イズ・マイン』全5巻
エンターブレイン 2006年
『ザ・ワールド・イズ・マイン』(The World Is Mine) 「週刊ヤングサンデー」97~01年
備忘メモA
95年 1月阪神大震災 3月サリン事件 97年連載開始
01年連載終了 9.11
ヒグマドン 大震災(自然災害): 神の領域
モン オウム(テロ) : 信仰:神人(キリスト)
トシ 犯罪(人間) : 教団:弟子
「夏目の目」 メモ
1) キャラ 強烈なキャラ
トシモンの変化
図1 1巻119p トシ=普通の気弱い少年 モン=野蛮(知性なし
図2 2巻516p トシの変貌
(同巻冒頭、山中でモンに言われナイフで女の子を切り刻む→
モン、ヒグマドンに「殺され」畏れを知る →トシ母自死
図3 同上346~347p モンはさほど変わらない モンの「キラキラ目」
図4 4巻286p モンの変化(繊細さ、知性化 マリアとの対応?
トシ 凶悪顔の定着 モン、マリアの聖性との対照?(人間臭さ
図5 5巻35p(? すっかり「向こう」にいっちゃったトシ
図6 同上191p(? 違う方向で「向こう」にいっちゃった別人モン
図1と図6比較 二度のヒグマドンとの遭遇後、昇華した別人モン
ヒグマドンという「神の領域」に触れた人間側の神的な者
反キリスト? 復活 ヒグマドンの必要性(虚構であることの刻印
「現実」の歴史社会に拮抗するフィクションの「強度」を試す?
図7 トシモン目の変化一覧 トシ=壊れる人間の眼 モン=聖化する目
2) コマ 演出 カットバックのうまさ
図8 3巻176~177p 大館市日常生活と主要キャラの取材場面に数コマごと混じる「何だかわからないモノ」のカット 直角コマのレンガ状積み上げ
(ヒグマドンの毛
図9 同上190~191p 都市日常・取材・マリアとトシモン遭遇のカットバックに重ね、「毛」の降臨 →気づくモンとコマの変化(モザイク的カットバック
図10 同上200~201p ヒグマドン登場へ 大館市壊滅の予兆
3) 内語 内面への引き寄せと「残酷さ」
図11 4巻22~23p ベタのナレーション(内語 圧倒的な現実から解離し始めているマリアの心的状況 先例:岡崎京子、くらもちふさこなどの内語表現
主要キャラ内面への引き込み→感情移入→物語(虚構)の現前性
著者インタビューより
〈地球を壊すレベルのほらを吹きましたよ〉5巻6p
〈ホラ話が中心だったので、周りはリアルにしようとした〉1巻5p
リアリティと現前性を前提に「残酷」を感じる →「人間」らしさを描けないと殺人・死を「残酷」と感じない 『北斗の拳』の「爽快さ」と対照的
図12 4巻224~225p 黒い内語が全体を侵食するように増殖=マリアの意識の混濁(過去のカットバックへ)
同じ方法論を「殺される側」へ トシに惨殺される関谷潤子の意識の窓=コマ
図13 同上452p トシの瞳に写る、殴られて変形した自分の顔
〈生前 最期に確認した顔〉
図14 同上455p マリア同様の黒いコマ=意識の剥離→現実からの途絶=死
こうした表現をあえて見る意味・価値を認めるかどうかが、同作品を読めるかどうかの基準? 判断は読者に委ねられる
いずれにせよ、マリアは人格崩壊し、最期にはトシモン含め全員が異界へ
備忘メモB キャラの魅力
手旗の塩見課長 ヨダレ機関車の薬師寺課長補佐 潔癖症の菅原県警本部長
モンの彼女(?)初江と同居女性 ハンター飯島
由利勘首相の名言
〈人類究極の罪は想像力の欠如です。 つまり、 バカは罪だ!!〉2巻585p
米大統領〈力なきところに秩序はない。 私はね・・・・ユリ 日本の総理大臣ほど せつない統治者を知らない。〉
由利〈仮に貴国を凌ぐ力が現れ、その座を追い落とすことなきよう 心からお祈り申し上げます。〉4巻79p
菅原の名言
〈この国のすべての人間に挑戦したい。 人権を差別せよ。 自ら社会を逸脱する者に その生における平等はない。 人名を差別せよ。 社会と個人の命を秤にかけた時、民主主義は迷わず社会を選択せねばならない。 「ヒューマニズム」を差別せよ。 その言葉の響きに酔いしれ 思考を停止した者のみが 殺すことを すべて悪とする。 人間とはあまりに不完全な度し難い生き物であるにもかかわらず、 神をも恐れず懸命に守るべき命と葬るべき命を常に選択してきたのだ。 ならば 差別することもヒューマニズムである。 反論を唱える者は 自らの覚悟と信念を試していただきたい。〉5巻198~200p